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転生1

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 ──悪役令嬢とは、作品世界の中でヒロインの敵として登場する役柄である。

 彼女は家柄や身分を利用し、時には取り巻きを使って嫌がらせをするなど、ありとあらゆる手段を用いてヒロインの恋路、果ては輝かしい未来を妨害する。
 しかし大抵の場合、最終的にヒロインに敗北し、国外追放や修道院送りとなりバッドエンドを迎える運命にあった。

 だが、ここ最近その流れが変わり、悪役令嬢は敵キャラからメインヒロインへと進化する。
 悪役令嬢は「誤解されやすいけど本当はとても良い子」や、「ハイスペックだけど中身は残念☆」なパターンだったり「チート持ちの転生令嬢」という多種多様な役どころに変化していく。
 そして昨今、多種多様な悪役令嬢がバッドエンドを回避するために、もしくはスローライフを送るために逆境を乗り越える、という物語がクリエイター達によって大量に制作されるようになった。
 それは「悪役令嬢物」として人気を博し、一つのジャンルとしてたくさんの読者から支持を得ている。

 ──かくいう私も、悪役令嬢物が大好きだ。

 実は腹黒だったヒロインに陥れられるところを、持ち前の頭の良さや立ち回りで回避するところは痛快だし、悪女なヒロインにザマァするシーンはスカッと爽快な気分にさせてくれる。
 そして婚約破棄したヒーローよりも更にハイスペックな、真のヒーローに溺愛される展開にはメチャクチャときめいた。
 しかもヒロインは真ヒーローが本命で、雑魚ヒーローから乗り換えようとするけれど真ヒーローに拒絶され、こっぴどく振られればなお良し! である。

 もし自分が転生するなら、是非とも悪役令嬢でお願いします! と、思ったことは一度や二度ではない。

 悪役令嬢物が大好きな私は、ありとあらゆる悪役令嬢物の物語を読み漁った。小説や漫画にとどまらずアニメやゲームにも手を出すほどに。

 ──そうして、悪役令嬢を愛した私はまさかの異世界転生を果たす。もちろん前世の記憶付きで。

 ちなみに思い出したのは、攻略対象と再会したとか死にかけたとか断罪シーン真っ只中みたいな劇的ではなく、普通に夢の中だった。

 ──この世界が、『』という物語と同じ世界で。
   しかも自分が、悪役令嬢にザマァされるヒロインだということを。



* * * * * *



「そっちかーーーー!!」

 これが、前世を思い出した私が発した第一声だった。

 夢の中で『』を読んでいる自分に気づくと同時に、私の前世の記憶が芋づる式に蘇ったのだ。

 私は今現在の自分の容姿を思い出して愕然とする。
 ──ふわふわなストロベリーブロンドの髪に青い瞳の、天使のような女の子。

 前世の記憶と自分の容姿を照らし合わせた結果、私は『ミシュリーヌ・ランベール』に転生してしまったらしい。

「なんでやねん!」

 思わず関西弁でこの世界にツッコミを入れてしまったけれど、それは仕方がないと思う。何故ならあんなに憧れていた悪役令嬢の『ベアトリス・ベルジュロン』ではなく、よりにも寄ってダメな方のヒロインだったからだ。

 ──ミシュリーヌ・ランベール

 私が前世で住んでいた日本という国で、サブカルチャーとして人気の漫画『』に於いて、ミシュリーヌは悪役令嬢を断罪しようとして逆にザマァされてしまうヒロインとして描かれている。
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