18の夏、9mmパラベラムの夏
実習で防衛産業(弾薬工場)に行った高専生が、無自覚に公安からマークされた話。(※作中の85%は実際の体験に基づいています)昭和63年、夏。八代高専の仁科遼一(18歳)は、防衛弾薬の心臓部・旭精機製作所へ実習に赴く。ガチガチの入門警備に緊張する遼一を笑顔で出迎えたのは、総務課の越知直子(24歳)。寮の手配から味噌カツの洗礼まで面倒を見る気さくな姉貴分――だが彼女の正体は、社内に潜む公安組織の監視要員だった。現場でトランスファープレスの図面と格闘する遼一だったが、武器庫のAR-18への着眼や歓迎会での武器輸出論、さらに試射データの裏紙を一目で見抜いたことで「工作員潜入か」と社内に非常警報が走る。色めき立つ幹部たちを前に、直子は冷徹な観察眼で一蹴する。「白よ。ただの機械オタクです」。直後、警察庁から届いた身元調査書は直子の見立て通り、幹部たちを震絶させる驚愕の事実を告げていた――。疑いは晴れ、F-15Jイーグルの削り出しや旧軍の手描き図面庫まで案内される遼一。だが東京へ向かう彼を見送る直子の瞳には、まだ別の光が宿っていた。「気をつけてね。東京の街は、いろんな人がいるから」国家の歯車と大人の思惑に囲まれながら、18歳の青年が駆け抜けた、ひと夏のリアル・エスピオナージュ。
あなたにおすすめの小説
愛人優先の旦那様へ。もう尽くすのをやめて離縁いたします
名門伯爵家に嫁ぎ、冷え切った家庭と逼迫した財政を身を削って支え続けてきたオルネラ。
しかし夫バルディンは、身勝手な愛人シルヴェットを屋敷に引き入れ、オルネラを家政婦同然に虐げ始める。
愛人の贅沢を優先し、オルネラの母の形見すら奪おうとした夫に、彼女の堪忍袋の緒が切れた。
「もう尽くすのはやめました。どうぞお二人でお幸せに」
周到に準備を進めていたオルネラは、莫大な私財を引き払い、自ら離縁状を叩きつけて屋敷を去る。
オルネラを失ったことで屋敷の帳簿も社交も瞬く間に崩壊し、狼狽するバルディン。
だが、事態は単なる愛人騒動では終わらなかった。
愛人シルヴェットの背後には、誰も予想しなかった驚愕の思惑が隠されていたのだった。
鳳凰に愛された令嬢を偽物と断罪した結果、国から祝福が消えました
公爵令嬢フランチェスカは、建国祭の夜、婚約者のボードワン王子から「偽物の巫女」と断罪され、国外追放を言い渡される。証拠は、侯爵令嬢グリゼルダが掲げた一枚の「鳳凰の羽根」。三年間かわいがってきた灰色の雛・ソレイユは「汚い鳥」と罵られ、処分まで命じられた。
――けれど、その灰色の雛こそ、二百年ぶりに人の世へ降りた本物の鳳凰。鳳凰は、みすぼらしい姿で「羽根の色ではなく、心で愛せる者」を試していたのだ。
国境を越えた瞬間、雛は黄金の鳳凰へと羽化し、祝福はフランチェスカとともに隣国フィオレンツァへ。彼女を客人として迎えたのは、豊穣祭を司る若き王太子コジモ。一方、祝福を失った故国では作物が枯れはじめ、偽の羽根の正体も白日の下に――。
わたくしは、何もしておりませんのよ? 羽根の色より、心の色。答え合わせをしたのは、あの子ですわ。
終わりにします
「終わりにします」
その言葉とともに、侯爵令嬢シルヴィアは毒を飲んだ。
婚約者は妹を選び、父は妹だけを信じた。
誰にも必要とされなかった人生を終えたはずなのに、目を覚ますと三か月前へと時間は巻き戻っていた。
もう、誰かに愛されるためだけに生きるのはやめよう。
そう決めた彼女は、静かに運命を書き換えていく。
これは、一度死んだ少女が、自分自身の人生を取り戻すための物語。
婚約者に好きな人ができたらしい
【本編全3話+番外編】
シャノン・ルビーレッド伯爵令嬢は、リュカ・アメジスト侯爵令息と婚約を結んでいた。
ある日、シャノンは、婚約者がニーナ・ペリドット男爵令嬢に懸想しているという噂を耳にする。
シャノンは断罪を回避するため、リュカとの婚約を円満に解消しようとするが――。
※ エブリスタに習作として掲載したものを改稿した作品です。
※ 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
患っているのは貴方達では?
第三王女が“不治の病”にかかり、その症状を緩和出来るのは近衛騎士のヴァルランだけ──。
そのヴァルランの婚約者であるミザリーは、“王女と騎士の叶わぬ恋”に酔う周囲と婚約者にウンザリしていた。
そんな中、ミザリーにも“不治の病”に似た症状が現れ──?
王女と病弱幼馴染みテンプレを混ぜて仮病じゃないパターンで練ってみました。
婚約破棄されたので、蜂も連れて出ていきます 〜蜂のいない果樹園に、実がなるとお思いで?〜
王都の夜会で、わたくしは婚約を破棄されました。理由は「その手を見ろ」。蜂に刺された痕だらけの手が、侯爵家の恥だと。
「我が領の果樹園に据えられた箱は、すべて焼き払う」
「では、持ち帰る許可をいただけませんか」
「持っていけ。一匹残らずだ」
――承知いたしました。一匹残らず、でございますね。
その夜のうちに、四十二の巣箱を運び出しました。
花は、それだけでは実になりません。運ぶものが要るのです。けれどあの方は三年間、一度も果樹園に足を運ばず、木は勝手に実るものだと信じておいででした。
やがて訪ねてきたのは、十年も果樹が実らぬ北の辺境伯。「木ではなく、土でもなく、虫が」——わたくしの言葉を、手帳に書き留めてくださる方でした。
北の丘に緑の粒が実る頃、南の果樹園は花だけを咲かせて秋を迎えます。
異世界養蜂ざまぁ・一話完結。ヒロインの武器は特殊能力ではなく、百年ぶんの帳面です。