回復魔法では治せない――王国唯一の作業療法士は、失われた営みの糸を結び直す――
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回復魔法によって、どんな傷も治せるようになったセルディア連合王国。
骨はつながり、失われた手足さえ元に戻る。
王国では、もはや「治せない傷はない」と信じられていた。
けれど、完璧に治ったはずの少年リュカは、なぜか木剣だけを握ることができなかった。
「握れるようになったら、何がしたい?」
そう問いかけたのは、回復魔法を使えない治療者、アルド・レイヴァン。
人と道具、場所、習慣、役割を結ぶ〈営みの糸〉を見つめ、その人が失った暮らしを共に探す、王国唯一の〈作業療法士〉だった。
身体を治せば、人は元の役割へ戻れる。
十二歳になれば〈適役判定〉によって、進むべき道が示される。
そんな王国の常識に疑問を抱きながら、アルドは「まだ決められない」と願う人々に寄り添っていく。
ある夜、かつて炎剣の英雄と呼ばれたパン職人ガルドが、アルドのもとを訪れる。
十三歳の養女ミナが、一枚の置き手紙を残して消えたのだ。
『少しだけ、誰の娘でもない日にしてもらいます』
ミナが自ら向かったのは、苦しい記憶や役割から解放されるという〈無憂教会〉。
だが、彼女から伸びる白い糸の先には、死んだはずのアルドの師と、人から苦しみをなくすための恐ろしい計画が待っていた。
傷を治すことと、その人の人生を取り戻すことは同じなのか。
過去の夢を、今も選び続けなければならないのか。
これは、誰かを「元どおり」にするのではなく、迷い、拒み、選び直せる明日を取り戻すための物語。
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