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2章 仕事仲間が出来ました。

第8話 生き様の一端

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 早速翌日から働き始めたユージーン君だけど……

 「仕事覚えるの、早いね? 元はどんな仕事してたの?」
 「何でも、だな。決まった仕事に就いてるのは役人や軍人くらいのもんだ。そこらの奴らは何でもやらなきゃ生きていけない」
 あ、瞳からハイライトが消えた。

 「畑仕事は最低でもやらないと食えない、だが戦う力がなければ出来た物も根こそぎ奪われる。食い物に火を通すにも薪を調達しなきゃならんし、病になれば薬草を採取しに行かなきゃならん。
 だなそれだけじゃ金は手に入らんから、荷運びでも店番でも何でもやった」
 「ああ……、経験者だったんだ」
 「いや、経験等と呼べるようなものでもない。こんなに楽な作物相手に今してる事の半分も面倒を見た事はなかったからな」

 やっぱりどんなに話を聞いても、日本のブラック企業ですらぬるま湯に思える過酷さを、私がどこまで想像できているのかさえ分からない。

 彼自身の仕事ぶりはとても丁寧で真面目。本当に慣れたら私より器用に仕事をこなしそうな……。

 「だが、その分家事は妻に任せきりにしたせいでさっぱりだな」
 「……あの、聞きにくいけど、その奥さんは?」
 「死んだ。去年生まれたばかりの子と……。俺の住んでた村が戦場になって、逃げ遅れたんだ」
 「う……、ご、ごめんなさい」
 「いや、いい。こんなの珍しい話じゃない。普通にそこらにゴロゴロしてるんだからな」

 いやー、ホントに私が迷い込んだのがこのアグリ様の居る空間でよかったよ。そんな世界にもし迷い込んでいたら、私なんか何日生きていられるか……

 「しかし……、これまでそんな余裕なくてこんな風に動物と触れ合う事などなかったのだが……、良いものだな、もふもふというものは」
 そう言うユージーンは今、鶏を両腕で抱いて撫で回している。

 鶏は少し迷惑そうにしながらも「仕方ないな」と大人しく撫でられている。

 うん、ストレス解消にはもふもふに触れるに限るよね。
 ……鶏に生えているのは羽毛なので毛皮とは違ってもふもふカテゴリーに入れていいものか分からないけど。
 まぁ、今のところはここには彼と私とアグリ様しか居ないし良いか、一緒で。
 まぁ、彼女には彼の心の平穏の為にもう少し耐えて貰おう。

 ……因みに今日の夕飯にはチキンのシチューを考えているんだけど、大丈夫……だよね?

 「じゃ、そのまま牛のブラッシングもお願いしていい? 私は小屋の掃除して来るから」
 「ああ、任された」

 あーあ、嬉しそうな表情しちゃって……。
 くぅ、少しはその攻撃力を自覚してくれ、じゃないと私のキャパがオーバーするじゃないか!

 私は少しふらつきながら動物小屋へ向かう。

 はぁ、まだ次の話は聞かないけど、できればこの美形成分を少しでも中和してくれるような人だといいなぁ……。
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