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第一章 孤児院編

3 窓辺の木の実が鳥に食べられた

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森から町に入るには、大きな門を通る必要がある。

孤児院の位置がどうなっているかというと、外側から森、町、神殿及び孤児院そして、貴族街となっている。

そういえばこの町は、城下町らしい。らしいというのは、情報がほとんど入ってこない孤児院の中で、まことしやかに語られていることだからだ。神殿は、貴族街と平民街をつなぐ門の役割も担っており、その神殿に併設される形で孤児院は存在している。もちろん、貴族街なんてみたことがない。





「おい、パイル。重いなら、片方持ってやろうか?」



「ありがとう、コニー。このままトレーニングを続けるのも悪くないけど、流石につかれちゃったからお願いするよ。」



「おう。早く帰らないと、うんこがもれちゃうからな。」



「だから、うんこじゃないわよ!」





まったく、どこの世界でも男子は男子だね。

口をひらけば、うんこうんこって。うんこの何がそんなに、男子を駆り立てるのだろうか?







そうして、ようやく孤児院にたどり着いた。

少しは腕の筋肉がついたかな?



「みんな、お帰りなさい。まあ、コニー。パイルのことを手伝ってくれたのね。とても偉いわ。」



院長先生がお母さんのような包容力のある笑顔で出迎えてくれた。

って、危ない危ない。和やかな雰囲気に流されるところだった。



「まあ、院長先生。私がコニーを手伝った可能性だってあるんですよ! 」



「まあ、といいたいのは私の方よ。心優しいクルルが、子どもたちに籠を持たせるなんて普通ならしないわ。あるとすれば、パイル、あなたがおかしな行動をしたときね。」



「おかしな行動? まったく心当たりがないですね。」







私がそういうと、院長先生とクルルお兄ちゃんはかわいそうな子を見る目で、私のことを見つめた。

すると、コニーが勢いよく手を挙げて、何かを言いだそうとしていた。いい予感はしない。



「院長先生!」



「なにかしら、コニー?」



「パイルは、ずっと前からうんこを我慢しています! 早くトイレに行かせてやってください。」



「まあ、そうだったの? 台所に籠を置いて、はやくいってきなさい。」





院長先生がそういうと、コニーは「俺に感謝しろよ」とでも言いたげなムカつく顔で、グッドサインをした。

私はすかさず否定しようとしたが、逆にこの状況はいいかもしれないと考えた。なぜなら、さっさとこの場を切り上げて、自由時間に入ることができるからだ。

うん、そうしよう。歌の練習をする方が重要だね。



「はーい。」



私はコニーから籠を受け取って、内また歩きで台所へと向かった。

そう、今の私はアレを我慢しているのだ。我慢している演技が大切だ。







台所に着くと、神殿から料理が下げ渡された後の様で、テーブルには食事が並んでいた。

さっさと籠を置いて、歌の練習をしよう……っと、いい置き場があった。

私は、開けられた窓の近くに移動して、窓枠に籠をおいた。ここの窓は2重窓になっているから、割かし奥行きがあるのだ。



よし、これで完了ね。今日もいつも通り、屋上で練習しましょう。

私は、仕事を終えた達成感と共に、歌の練習へと向かった。







歌の練習をしようにも、夕食まであまり時間がない。

軽く2曲くらい歌って、今日は終わりにしよう。

私は前世の日々を思い出しながら、歌を歌った。



お父さん、お母さんには本当に申し訳ないな。私のバンド活動を全力で応援してくれた優しい両親だった。歌のレッスンにも通わせてくれたし、ライブにも毎回来てくれた。それなのに……。



それから、バンドメンバーのみんなもどうしているかな。あの日、私の不注意で事故になんてあってしまって、迷惑をかけちゃったよね。本当にごめんなさい。

まだまだ歌っていたかった。みんなでもっと上にいきたかった。もっと、みんなで作った曲を多くの人に届けたかった。



涙がこぼれそうになったけど、目に力を込めてなんとか涙を押さえつけた。

皆にもらった歌を、この世界の人たちに届けたい。

絶対にあきらめない。チャンスが来ればしっかりとつかみとれるよう、練習を頑張っていこう。









ーー











その夜。

私は、正座をさせられていた。



「パイル、木の実は窓辺におかないようにと普段から言っているわよね?」



「………すっかり頭から抜けておりました。申し訳ございませんでした。」





適当に窓辺に置いてしまった木の実は、外から現れた大量の鳥たちによって食べられてしまったのだ。

確かに、日ごろから言われていたけど、あの時は歌の練習で頭がいっぱいで、すっかり忘れていたのだ。言い訳のしようがない。





「明日から1週間、採集担当と調理担当を命じます。自由時間はないものと思っておきなさい。」



「そ、そんな! 1週間も歌の練習時間がつぶれてしまうなんて、耐えられないです!」



「うふふふふ。2週間でもいいのよ?」



「……喜んでお勤めに励ませていただます!」
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