寡黙な女騎士は、今日も思考がダダ漏れです。

 ――リーゼファ・アインローゼ。汝をナディアード殿下付き護衛に任命する。

 憧れのナディアード殿下のおそばに♡ 護衛なんだから、ずっと一緒にいられるのよね♡ いっぱいお守りしちゃって、「リーゼファ」なんて名前まで呼ばれるほど仲良くなったりして♡
 そして、そして、そして……。
 ――きみといると、僕はただのナディアード、一人の男として安らぎを感じるんだ。
 ――殿下……。
 ――二人っきりの時は、「殿下」ではなく、「ナディアード」と名前で呼んでくれないか。
 ――ナ、ナディアードさま……。
 なーんて甘い展開が待ってたりして……キャーッ!!

 とかなんとか、頭のなかでイロイロ妄想するけれど、実際の私は、表情一つ変えない(変わらない)し、口に出して何かを伝えることもない。頬を染めたこともなければ、眉一つ動いたこともない。
 寡黙な父と厳格な祖母に育てられた結果、ついた二つ名は、「氷壁」。
 氷のように冷たく、硬く、取り付く島のない女。
 騎士として充分な実力を備えているものの、女性としては面白味もかわいげもない。
 今日も、脳内煩悩を爆発させながら、黙々と護衛の任に就く。

 思考と現実。ギャップ激しい一人の騎士の物語。
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