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第7章 それぞれの執着心
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わたしとランシード様は、手を繋いだまま迎賓館に向かって城を出た。
城を出たところで、待ってくれていたディエル様と合流すると、彼は深々と頭を下げてくる。
「昨日は妹が失礼な真似をしてしまい、誠に申し訳ございませんでした」
「ディエル様が悪いわけではありませんから、気にしないでください。ですから、頭を上げてください」
首を横に振ると、ディエル様はゆっくりと顔を上げて口を開く。
「妹はセフィリア様に接触できないように国に帰らせましたし、万が一、テイルス王国内で接触しようとしても他の騎士や使用人にはセフィリア様に近づけさせないように徹底いたしますので」
「城内については、彼女は入城禁止にするから安心してほしい」
ディエル様の言葉を継いで教えてくれたランシード様に微笑む。
「わたしは気にしておりませんので大丈夫ですわ。失恋を乗り越えて、少し強くなった気がしていますので、多少、何か言われても傷ついたりはしません」
「セフィリアはもう、あんな奴のために泣かなくてもいいからね?」
「はい。ありがとうございます」
ランシード様に頷いてみせると、安堵したような顔になった。
デスタのことで泣くなんてありえないわ。
だから、そう思いながら微笑んだ。
その後は、迎賓館でこれからのことについての話し合いをした。
歓迎式典などはシドナ様が行っているそうで、今日は特にランシード様の予定はなかった。
だから、一日ずっと一緒にいて、城下のレストランでディナーまでご馳走になった。
こんな風に男性とゆっくり食事をしたのは初めてだった。
デスタみたいに、ランシード様も誰かを優先するのかしら。
そう思って、帰りの馬車の中で聞いてみる。
「ランシード様がデート中にわたしを置いて帰るとしたら、どんな理由が考えられますか?」
「デート中に置いて帰ることはないと思う。結婚したら一緒に帰れば良いし、違う場合はセフィリアの住んでいる場所まで送るよ」
向かい側に座っていたランシード様は、席を移動し、わたしの隣りに座ると、優しく頬に触れてくる。
「置いていかれて悲しい思いをしたって聞いてんのに、置いて帰るなんてできるわけねぇだろ」
「どうして、シード様になってるんです?」
「本音だから」
「ランシード様の時は本音を言えないのですか?」
「そういうわけじゃねぇけど、やっぱり、本音を言い出しにくいのは確かだ。王太子なんだから、個人を優先するなんて言いにくいんだよ」
ランシード様の言っていることは理解できる。
王家は国民と大事な人なら、国民を優先しなければならないのが、わたしたちの世界の暗黙のルールだ。
「そのことについては理解しております」
デスタの時とは理由が違いすぎる。
テスタの場合は妹、ランシード様の場合は国に何かがあった時だもの。
ランシード様の手に自分の手をのせて頷いた。
「良かった」
ランシード様の顔が近づいてきたので、慌てる気持ちを抑えて目を閉じた時だった。
馬車が急停止したので、わたしの体が前のめりになった。
ランシード様が抱きかかえてくれたおかげで、わたしは体をどこかにぶつけることもしなくて済んだ。
「ありがとうございます」
「いや。大丈夫か?」
「はい。ランシード様のおかげです」
ランシード様の腕に抱かれたまま頷いた時、外から声が聞こえてきた。
「セフィリア嬢に話があるんです!」
離れたところで叫んでいるのか声は遠いけれど、相手が誰かは見なくてもわかった。
「ロビーストか」
ランシード様が眉根を寄せて呟いた。
ロビースト様は叫び続ける。
「フィーナ嬢がわたくしのところに戻ってこないのです! なら、セフィリア嬢! あなたがわたくしの妻にならねばなりません!」
「何言ってんだ、あの馬鹿は」
ランシード様はわたしを強く抱きしめて言った。
城を出たところで、待ってくれていたディエル様と合流すると、彼は深々と頭を下げてくる。
「昨日は妹が失礼な真似をしてしまい、誠に申し訳ございませんでした」
「ディエル様が悪いわけではありませんから、気にしないでください。ですから、頭を上げてください」
首を横に振ると、ディエル様はゆっくりと顔を上げて口を開く。
「妹はセフィリア様に接触できないように国に帰らせましたし、万が一、テイルス王国内で接触しようとしても他の騎士や使用人にはセフィリア様に近づけさせないように徹底いたしますので」
「城内については、彼女は入城禁止にするから安心してほしい」
ディエル様の言葉を継いで教えてくれたランシード様に微笑む。
「わたしは気にしておりませんので大丈夫ですわ。失恋を乗り越えて、少し強くなった気がしていますので、多少、何か言われても傷ついたりはしません」
「セフィリアはもう、あんな奴のために泣かなくてもいいからね?」
「はい。ありがとうございます」
ランシード様に頷いてみせると、安堵したような顔になった。
デスタのことで泣くなんてありえないわ。
だから、そう思いながら微笑んだ。
その後は、迎賓館でこれからのことについての話し合いをした。
歓迎式典などはシドナ様が行っているそうで、今日は特にランシード様の予定はなかった。
だから、一日ずっと一緒にいて、城下のレストランでディナーまでご馳走になった。
こんな風に男性とゆっくり食事をしたのは初めてだった。
デスタみたいに、ランシード様も誰かを優先するのかしら。
そう思って、帰りの馬車の中で聞いてみる。
「ランシード様がデート中にわたしを置いて帰るとしたら、どんな理由が考えられますか?」
「デート中に置いて帰ることはないと思う。結婚したら一緒に帰れば良いし、違う場合はセフィリアの住んでいる場所まで送るよ」
向かい側に座っていたランシード様は、席を移動し、わたしの隣りに座ると、優しく頬に触れてくる。
「置いていかれて悲しい思いをしたって聞いてんのに、置いて帰るなんてできるわけねぇだろ」
「どうして、シード様になってるんです?」
「本音だから」
「ランシード様の時は本音を言えないのですか?」
「そういうわけじゃねぇけど、やっぱり、本音を言い出しにくいのは確かだ。王太子なんだから、個人を優先するなんて言いにくいんだよ」
ランシード様の言っていることは理解できる。
王家は国民と大事な人なら、国民を優先しなければならないのが、わたしたちの世界の暗黙のルールだ。
「そのことについては理解しております」
デスタの時とは理由が違いすぎる。
テスタの場合は妹、ランシード様の場合は国に何かがあった時だもの。
ランシード様の手に自分の手をのせて頷いた。
「良かった」
ランシード様の顔が近づいてきたので、慌てる気持ちを抑えて目を閉じた時だった。
馬車が急停止したので、わたしの体が前のめりになった。
ランシード様が抱きかかえてくれたおかげで、わたしは体をどこかにぶつけることもしなくて済んだ。
「ありがとうございます」
「いや。大丈夫か?」
「はい。ランシード様のおかげです」
ランシード様の腕に抱かれたまま頷いた時、外から声が聞こえてきた。
「セフィリア嬢に話があるんです!」
離れたところで叫んでいるのか声は遠いけれど、相手が誰かは見なくてもわかった。
「ロビーストか」
ランシード様が眉根を寄せて呟いた。
ロビースト様は叫び続ける。
「フィーナ嬢がわたくしのところに戻ってこないのです! なら、セフィリア嬢! あなたがわたくしの妻にならねばなりません!」
「何言ってんだ、あの馬鹿は」
ランシード様はわたしを強く抱きしめて言った。
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