風疹

「明日のない闇」

僕にはこんな事言えた義理じゃないんだけど…
そう言って叶真江は、ことの顛末を嫌に神妙に話し出した。

こういうことは出来れば誰にも言いたくなかったし、わたしだって、そんなこと普通の人間になんか、できたモノじゃないはずだって、そんなことはわかってんのよ?

前置きが長くなったわよ?話を聞いていた、天野瑞稀は、そう言いながら、タバコに火をつけようとしたが、辞めた。

私だって本当にこんな事になったのは悲しい事だと思っているわ?けどね?物事には順序ってものがあるよ?あなたのしていることは明らかに順序を無視している。それは頂けないわよ?わかってる?あなたのしていることは何の意味もない。

叶は、傍に誰もいないか、確認した後、そっと、私に耳打ちした。

悲しいけれど、わたしには誰も頼りになる人間が居ない。だから、貴方にだけは心を開く。これから先、もう、わたしには二度とステキな人が現れない。そんな先の事なんか、もう期待してないわ。

そう言った後、彼女は天野にそっと、手元に丸めた紙屑を渡した。

それを見た叶は、軽く沈黙した後、やがて、席を立ち、これから起こることのおおよその検討をつけた。

まず、一つ目。この世界には、わたし自身でさえよくわからない現象が起きている。それはわたし個人にとって、どうでもいいことだ。

二つ目。自分がナニを求められているのか?イマイチ、把握しずらい点。

三つ目。この世界にはどうでもいい人間が多いと言うこと。その他人の眼を気にしないで、私を煩わせる事なく、排除する。

それが私に今できる最善の手だという事。

…また、来るわ。

天野はそう言って、屋外へ出た。

この世界はきっと、もう終わってるのよ…私には何も夢なんか無かったのよ…

空を見上げて、ため息を吐く。彼女は、こんな闇の世界に生きたいなんて、もう全く望んでいなかった。何かが、違うんだなってそう思ってた。

私は明るい世界へ行きたいンダな…

ため息と共に吐き捨てたその言葉が空を舞い、空中に霞んで見えなくなる迄、叶の事を考えた。

独りで生きてくよ、あんたは…

私は、握りしめたその紙屑をそっと、開いた。そこには、私がナニを求めていたのか、書かれてあった。

"無駄なモノは捨てなさい"

なるほどね…フフ、それはたしかに言えてるわ。

夜の闇の世界に、くだらない邪なものが溢れていた。消え入る太陽の影のように、心はいつだって求めてきた。明日の風が、誰にも、遮られない様に私は、私の風を信じて行く、そう決めたんだった。

"またね、責任。"

続く。
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