玻璃のまどろみ、言の葉の塵 ―音のない世界が触れる言葉―
「あなたの指先が、私の言葉でした」
大正の帝都、琥珀色の時間が流れる喫茶「白昼夢」。
耳が聞こえず、 音のない世界に生きる小夜にとって、翻訳家・彰人の指先こそが、唯一の鮮やかな「言葉」だった。
原稿をなぞる指の震え、掌から伝わる微かな熱、そして紙の裏に刻印されたインクのない筆圧。耳では捉えられぬ彼の鼓動を、小夜は自身の皮膚を通じて聴き取っていく。けれど、雪が降り積もるあの日、彼の指先が最後に遺したのは、あまりにも切ない「追伸」だった――
指先と指先の間にある、海よりも深い断絶。そこに咲いた、触れることでしか確かめられない、透明な愛の物語。
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