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第一章 辺境の町
第208話 幻術耐性の魔道具
しおりを挟むと言うわけで、近くにある魔道具屋さんまで来ました。
それぞれのお店は歩いて行ける距離で、この世界的にはとっても便利なんだろうけど、もっと便利でコンパクトに買い物出来たコンビニやショッピングセンターなんかを知っている身としては不便に感じちゃうんだよね。そんなの贅沢だってわかっているんだけど。
お店のカウンターに座っていた店主のマールさんが買取に応じてくれたので、ラグナードが背負子から例の物を取り出して渡す。
霧の魔樹の樹液を固めた物だ。
この素材は稀少で、高い幻術耐性効果もあるみたい。直接持ち込むと魔道具を安く作ってくれるらしいので、付与魔法付きのブーツと一緒に注文するつもりなんだ。
「これはまた、いいのをもってきたねぇ。細工しやすい固さだし、この色だと聖魔水晶が溶け込んでいるんじゃないか」
「……その通りだ」
一目みて素材を言い当てましたよ。さすが高レベルの『鑑定』スキル持ち。
ラグナードも『鑑定』はレベル3だと言ってて、それでも店主さんのスキルを看破出来ないってことは、更に高レベルだってことだもんね。当然か。
「随分たくさんあるけど……これ、全部売ってくれる気はあるのかい?」
「ああ、一部を除いてそのつもりだ。三人分の幻術耐性の魔道具を注文したいから、その残りになるが……」
「いいともさ。魔道具のお代もそこから引かせて貰うってのでいいね?」
「頼む。それと二人に物質強化付きのブーツを見繕いたい」
「わかった。色々あるから後で選んで貰うよ。じゃあまずは、この樹液を硬化して貰おうかい。安く上げたいんだろ?」
茶目っ気たっぷりにウィンクしながらそう言われた。さすが、冒険者の懐事情をよくわかっていらっしゃる。
錬金術師に頼むとお高くなるので、節約のためにも自分たちに出来る作業……霧の魔樹の樹液を硬化す魔法処理を自分達の分だけしてしまうことに……。
マールさん曰く、聖魔水晶が溶け込んでいると、より高レベルの魔道具を作れるそうなんだけど、ギリギリまで水分を抜き固めることで純度が増して、更に高い幻術耐性の効果を期待出来るとのこと。なるほど、頑張ろう。
不純物がない一番きれいなところを『鑑定』して貰ってから、用意してくれた専用の手袋を使って手に取る。この柔らかさだとまだ、皮膚が溶けちゃうからね。
出来上がりの大きさを想像し、縮む事も考えて大きめに三つ、切り取っていく。
念のため、私の聖魔法で『浄化』してみたら、一層、綺麗になったと『鑑定』結果に出たらしく、満足そうに頷かれた。
次に、指示された通り、生活魔法の『乾燥』を使って硬化を開始する。三人とも使えるのでそれぞれ自分のをやっていくんだけど、早々に魔力量の少ないリノがへばってしまった。
でも一番、総魔力量が多いラグナードが彼女の分を手伝ってくれたので、無事に三つとも仕上げることが出来たよ。
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