婚約者を妹に奪われ、家出して薬師になった令嬢は王太子から溺愛される。

二位関りをん

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第23話 看病

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「アダン様?」
「はあっーー…」

 いつの間にか顔色が真っ白さとは真逆に紅潮し、息も苦しそうになっている。すぐさま従者にメイド、執事が駆けつけて倒れたまま動けなくなっているアダン様を抱えて部屋まで運び入れる。私はその間にハイダと医者を呼び、アダン様の部屋まで案内した。

「アダン様!」
 
 部屋に入ると、すぐさま彼の上半身の衣服をある程度緩め、診察を始める。アダン様は時折咳をしていて、息自体も途切れ途切れなものでいかにも苦しさを感じられるものになっている。
 視察の時は一瞬顔色が悪く見えたくらいで咳はしていなかっただけに、急な体調変化だったのが理解できる。その時点で気づいて声掛けしていれば。と一瞬だけ後悔の念が胸の奥から浮かぶ。

「肺を病んでおられます。それに熱も」

 その診断結果を聞いて私はすぐに医薬庫に向かい、薬を探す。必要なのは熱さましと咳止め。後は痰切りの薬に炎症を抑える薬もあった方がいいだろう。

「ジャスミンさん、これ!」

 私の後を追って医薬庫に来たハイダが薬を木箱から引っ張り出してくれた。2人で協力しながら薬を出し、用量を確認しつつ、アダン様と医者の元へすぐさま持っていく。

「薬を用意いたしました!」

 そう私が告げると。医者がすぐさま薬をチェックする。ちなみに薬はどれも食後想定のものとなる為、何かを口に入れてから飲む必要がある。

「えと、おかゆか何かあれば……」
「お待たせしました!」

 メイドが小さなお皿に入ったおかゆとお湯を持ってきた。私はそのおかゆの入ったお皿と匙をメイドから貰う。

(おかゆを食べてからだと時間がかかるし、それならいっそ一緒に混ぜて食べてもらおう)

 おかゆに薬の粉を一部混ぜて匙でかきまぜ、アダン様の口に入れる。残りの薬はお湯の中に入れてこれもダマにならないようよくかき混ぜておく。本当は何かを食べてからの方がいいのだが、時間がない。

「アダン様、どうぞ」

 匙をアダン様の口元に近づけると、何とか口に含み、飲み込んでくれた。彼の咀嚼とのどの動きを見計らいながら匙を向けて食事を介助する。

「とりあえず、何か冷やすものありますか?」

 熱を早く下げる為に、私はメイドにそう尋ねると、しばらくして冷えたタオルが持ち込まれたのでそれを額とわきの下と後頭部にそれぞれ当てて、熱を冷ます。後頭部に当てたタオルの下にはもう1枚乾いたタオルを入れ、なるべく枕が濡れないようにもした。

(これで、だいぶ熱は冷えるはず……)

 おかゆはなんとか食べきってくれた。食欲はある点は安心できる。
 その後、アダン様は薬を飲み終えると、すうすうと寝息を立てながら眠っていった。夕方になる頃には呼吸音は多少苦しさが消え咳もだいぶましになった。

「だいぶ落ち着かれましたね」

 ハイダのその言葉に、私ははい。とほっと一息つきながら答えたのだった。

「よく頑張りましたね」
「医薬師長ありがとうございます」
「あとは薬が効くのを待ちましょう。きっと大丈夫」
「はい」
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