わんど、国さなる〜人口812人の町が、日本から独立してみた〜
「町がなぐなるってが」
来年の春、人口812人の鬼泊町は合併で地図から消える。住民説明会の最前列で、毛布にくるまっていた87歳の元町長・トメは、それをきちんと畳んでから言い放った。
「わんど、国さなるはんで」
国家元首は女王トメ。防衛大臣は猟友会の会長。灯油大臣は泣き虫の町長。
東京で心をすり減らして帰ってきた元広告マンのハルが、酔った勢いで投稿した建国動画は、一晩で三百万回再生。気づけばハルは、外務大臣に任命されていた。
手作りのパスポートに、けの汁一杯が条件の入国審査。二番の真ん中を誰も歌えない国歌。説得に来たはずの県庁職員・真壁は、なぜか入国審査の列に八時間並んでいる。
冗談で始まった独立は、やがて町の山を狙う者たちを呼び寄せて――。
津軽の小さな町が、本気で日本から独立しようとした、ひと冬の物語。
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