婚約破棄された宮廷薬師ですが、隣国で溺愛されています 〜私を「薬係」としか見なかった王太子が寝込んでも、もう戻りませんわ〜
世の中には、誰のおかげで続いているのか、本人も気づかない「当たり前」がある。王太子アロイスの健やかな朝も、その一つだった――それを毎朝つくっていたのが、婚約者で宮廷薬師のセレナだと、誰も知らないまま。
セレナの腕は、生まれつきの才ではない。下働きの見習いから七年、毎晩欠かさず覚え書きをつけ、諦められた古い処方を独りで解き直し、数えきれない毒を舐め分けてきた。その積み重ねが、一舐めで組成を、一目で病を言い当てる域に届いていただけ。
なのにアロイスは、口の達者な“聖女”に心を移して言い放つ。「薬なんて、誰が淹れても同じだろう」。そうしてセレナを婚約破棄し、国境へ追いやった。
雨の街道で行き倒れかけた彼女を拾ったのは、政略の縁談で寄越された隣国カルディアの“一使者”を名乗る男、ジェラルド。彼が本当は何者なのか、セレナはまだ知らない。そして彼もまた、彼女が何者かも、その手が王家を支えてきたことも知らないまま。
一方、毎朝の一服を失ったアロイスは、ひと月で寝台から起き上がれなくなる。エルデン王家が代々隠してきた“ある体質”が、静かに牙を剝き始めて。失って初めて値のつく献身と、腕を知らないまま芽生えた情。これは、捨てられた薬師令嬢が、自分の名前で誰かに必要とされるまでの、痛快で甘い再生の物語。
セレナの腕は、生まれつきの才ではない。下働きの見習いから七年、毎晩欠かさず覚え書きをつけ、諦められた古い処方を独りで解き直し、数えきれない毒を舐め分けてきた。その積み重ねが、一舐めで組成を、一目で病を言い当てる域に届いていただけ。
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