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第一章
27鬼ごっこ
しおりを挟む逃げる王子と後を追いかける令嬢。
何とも言えない光景だけど、絶対にグレスティア様はウド様を嫌いじゃないと思うんだけどな。
「また逃げられましたわ」
「グレスティア様」
「レティシア様…」
しょぼんとしたグレスティア様に私はかける言葉が見つからない。
こんな時本当の悪役令嬢ならば泣き言を言うなと言うのだけど、常に堂々と完璧な令嬢である彼女にそんな言葉を言っても意味がない。
「クラウド殿下は私が嫌いなのですわ」
「えっ…」
あれは嫌いと言うよりも苦手意識と誤解が生じているのではないかと。
「どうしたらレティシア様のように話しかけてくださりますの?」
ああ、こんな弱気な姿を見るなんて思っても見なかった。
だってゲームでも社交界でも完璧な令嬢だったけど、思えば人間は完璧じゃないよね?
「誤解があるかと」
「誤解?」
「これは私の想像ですけど」
半分はゲーム上のシナリオと設定による知識だけど。
「クラウド殿下はルクシオン様に劣等感を抱いていると」
「存じております」
「それ故に…きっとグレスティア様に対しても自信がないかと」
多分あの人は本気で嫌いなら婚約を受けないと思う。
「グレスティア様を嫌っているなんて事はないと思います。ただルクシオン様とは違って女性との距離感が解らないと」
うん、これだけは断言できる。
私は女性扱いを受けている事はないな。
「どうしたらいいかしら」
正直私は逆ハールートは知らない。
純愛ルートしかプレイしていないので、解らないけど。
「そうだ。いい方法があります!」
お菓子が大好きなウド様と仲良くなる方法はやっぱりお菓子だ。
「というわけで皆でお菓子を作ります」
「お嬢様、せめて事情を皆さんに」
「何故こんな事に」
折角だから攻略対象も呼んで皆でお菓子を作ることにした。
「まぁ、仕事は終わっているからいいけどね」
「殿下にお菓子作り等」
「はい、ヴォルク様。エプロンです」
嫌がりながらもちゃんと参加するあたりがブレないな。
「本日の先生はダイアナ先生です」
「本日は初心者でも簡単にできるチョコビスケットを作ります」
拍手の音が聞こえ、私達はお菓子作りをする事になったが。
この時私は知らなかった。
いくら完璧な令嬢でも相手は貴族令嬢で決して女性としての完璧を求めては行けない事。
そして平民の女性と貴族女性には大きな違いがある事を。
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