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13:[涙 止め方]【検索】
しおりを挟む「ごめ、な、さい。あおい、さん」
ずっと勃起してた。
震える声で、やっと謝罪の言葉を口にした。そう、最初にアオイさんに触られた時から、ずっと俺のちんこは反応していたのだ。何度も画像で見ていたアオイさんの手だって思ったら、なんだかもうどうしようもない気持ちになって。もう、ダメだった。
「大丈夫ですよ、タローさん」
「っふぅ」
でも、アオイさんはその事に全然触れてこなかった。それは、今もそう。完全に勃起してて、きっと気持ち悪いって思ってる筈なのに。十個も年下の彼に、子供みたいに下半身を触られて「大丈夫ですよ」だなんて。
俺はもう恥ずかしくて、両腕で顔を覆い隠した。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
「……っぁ」
それでも、思わず声が漏れる。何やってんだ、俺。気持ち悪い声を出すな。推しに……アオイさんに迷惑だろうが。
「左を開きますよ。出来ますか?」
「は、い」
今度は左足を開く。昨日の夜、下の毛は全部剃ってしまっている。だから、いくら顔を隠したところで、本当に恥ずかしい場所を隠してくれるモノは何もない。全部、アオイさんに見られてる。
「上手ですよ、タローさん」
「っはぁ」
他人に触って貰うって、気持ちいい。アオイさんの声が心地良い。
そう、本能の赴くままに頭の中が快楽で満たされた時だった。勃起したちんこの裏筋を、下から上に指でツと撫で上げられるような感覚が走った。
「つ、っあ――……!」
その瞬間、真っ暗な視界の中に火花が散った。そして、気付けば。
「はぁっ、はぁっ」
俺は射精していた。
「……あ。うそ、だろ」
「うそだろ」と、驚愕に満ちた声が頭の上から降って来る。そりゃあそうだ。施術中に、その相手が射精するなんてきっと初めての経験だろう。だって、アオイさんにとってはただの仕事なのに。いや、俺にとってもコレはただの「脱毛」という行為でしかない筈なのに。
それなのに、俺ときたら一人で勝手に気持ち良くなって。
「……ご、ご、ごめなさ」
「っあ!い、いえ!今のはタローさんに言ったんじゃなくてっ!」
絞り出した声が、喉の奥で震える。
最早聞き飽きたであろう俺の謝罪の言葉に対し、アオイさんはやはり動揺を隠せないようだった。
その様子に、俺の体は更に震えた。
「あっ、あの、ごめ。ごめんなさい。ごめんなさいっ!」
嫌われた。コレは絶対にアオイさんに嫌われてしまった。先程まで快楽の羞恥で昂っていた体から、一気に熱と血の気が引いていく。
「……っふぅ、うっ、うぇ」
「あの……違うんです。あの、タローさん。大丈夫ですから。泣かないで」
そうやって必死に俺の背中を撫でてくれるアオイさんの手は、やっぱり凄く優しかった。こうして、施術中に泣くのは最初の髭の時と合わせて、三回目になる。しかし、今回のが一番みっともない涙だ。
「あ、おいさん」
「はい、あの。こういう事はよくある事なので。本当に、気にしないで」
涙で揺らぐ視界の中、アオイさんの声が遠くに聞こえる。そんな中、俺はアオイさんの手から目が離せなかった。
「あ、ぁ……あ」
「タローさん?」
アオイさんの手には、べったりと乳白色の体液が付着していた。何故か手袋越しではなく、地肌に直接。それは、まごうことなき俺の精液だ。そこで、改めて俺は自覚する。
俺は、大切な“推し”に精液をぶっかけてしまったのだ。
「あっ、あの。手、手に俺のっ」
「タローさん、落ち着いてください。大丈夫です」
ほら、と笑いながらアオイさんは脇に置いてあったタオルで自身の手を拭った。いや、拭うだけじゃダメだ。ちゃんと洗って、消毒をして……。
「タローさんのも拭きますね」
「じ、自分で拭きますっ!」
まさか、アオイさんに俺の不始末の処理をさせるワケにはいかない!そう思っての発言だったが、アオイさんによって拭われたのは下半身ではなかった。
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