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(6)やぶをつついてヘビを出す?

重たい布団の中で

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「じゃあ不破ふわさんはこっちの部屋でやすんでくださいね。――私はあっちで寝ます。何かあったらここのしきりをノックしてください。即行で目覚めますので! く、くれぐれも扉を開けて起こそうだなんて思われないで下さいねっ?」

「はい。そちらの部屋は立ち入り禁止ですもんね?」

 日和美ひなみは不破の言葉にコクコクと首が外れそうなくらい激しくうなずいた。

 結婚しているわけでも、ましてやお付き合いしているわけでもない男女なのだ。

 少女漫画や日和美の大好きなTLティーンズラブでは間違いなく嬉し恥ずかし萌えキュンドキドキエッチなシチュエーションになる同居生活初夜だけど、実際は別室に各々が引っ込むと言う何とも味気ないもので。

(い、いやっ。不破さん、夜這いに来てくれたりしないかな?♥とか思ってやしないんだからねっ!?)

 一人おっもぉーい布団の中。

(ああんっ。不破さんそんなっ、ダメっ♥)

 だなんて、布団の重みを相手に良からぬ妄想をしているだなんて、扉の向こうの彼には口が裂けても言えないではないか。
 
 それに――。

 現実問題として、この部屋に不破が入ってきたら絶対まずいのだ。

 結局リビングの壁から取り外した萌風もふもふ先生の『ときマカ』(正式名称『ときめきハプニング★ 午後のティータイムで王子様に見初められて身ごもりました⁉︎ 強引な茶葉の君はカラフルなマカロンでうぶな姫を魅了する』。←長いっ!)の壁掛け時計だって結局、隠すのがもったいなくて、枕元の壁にこっそりちゃっかり立てかけてあったりするし。

 不破ふわがもしも日和美ひなみの言いつけを破って、眠っている日和美に近付いたなら、必然的に目に入ること間違いなし!

 加えて布の掛かっていない本棚だって全面的に御開帳♪のままなのだ。

 健康的な成人女性の桃色な乙女心としては大いに襲いに来てほしいところだけれど、それをされると困るだなんて、一体どんな焦らしプレイだろう!

「はぁー……」

 大きく溜め息をついて、密かに耳を澄ませてみたり。

 安普請やすぶしんのアパートだ。薄い壁一枚で隔てられているだけなのに、聞き耳を立ててみても衣擦れの音ひとつしてこない。

(不破さんっ。もしかして重いお布団に押しつぶされて窒息してたりします!?)

 考えてみればどこぞの王族さまや貴族さまや御曹司さまが、綿入りの重い掛け布団なんて使ったことあるわけがないではないか!
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