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隠れ家的なんとかと言うやつ

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「恥ずかしいなら目をつぶるといいよ? なぁに安心おし。俺が花々里かがりの口の中にちゃんと放り込んであげるから」


 言われてみれば、きっと頼綱よりつなの顔が見えるのがネックなんだ!


 そう思った私は、言われるままにギュッと目をつぶると「あーん」といつもより口を開けた。


 さすがに思いっきり大口を開けられるほど私も女を捨てていないの。


 だって相手、変なことばっかり言ってくるけど、顔だけは物凄ぉーく整った、頼綱異性なんだもん。


 平凡顔代表の私としては、これ以上醜態なんてさらせないのよ。


 と――。

 唇にふに、っとした感触が伝わってきて、「え!?」と思う。

 エビ天なら天汁てんつゆに浸っていたって、どこかしらサクッとしているはずだし、何ならつゆに濡れている分、もっと瑞々みずみずしいんじゃない!?

 嫌な予感に慌てて目を開けたら、頼綱よりつなの端正な顔が目の前にっ!


「んんんっ!」

 慌てて身を引こうとしたけれど、まるでそれを察したみたいに後頭部にガッチリ手を添えられて、身動きが取れないの。

 私は頼綱の箸に挟まれたまま宙をふらついているエビ天が気になって仕方ない。
 だってさっきまで下からお皿を添えていた手、今、私の後頭部にあるんだもの!!
 箸からつるりと滑ってしまったら、、落っこちちゃうよ!?


 それが心配でたまらないのに、そのまま口中を探るようにクチュッと舐められて、私は頭が混乱してしまう。
 キスされていることにも、エビ天の動向にも気を遣わないといけないとか、完っ璧にっ! キャパオーバーですっ!


 しばし後。

 満足気に唇を離すと、私の取り皿にエビ天を載せてくれた頼綱よりつなが、ニヤリとしながら「今日のキスキミはほろ苦かったね」と言って。


 私はひとまずエビ天が無事なことにホッとしながらも、頼綱を睨みつける。


〝フキノトウを食べたんだから仕方ないじゃない!〟

 「フキノトウみたいに苦い女の子」だなんて、可愛げがなくて何かだ!
 どうせなら、「花々里かがりはマシュマロみたいに甘くてふわふわだね」とか「いちごみたいに甘酸っぱくてフレッシュだね」とか言われたいじゃない!

 即座に苦さの理由をフキノトウが悪いのだと力説しようとして、だったらどの天ぷらだったら?って考えてしまってから……突っ込むべきはそこじゃないとハッとした。


「なっ、な、な、何で……キス!!」


 エビ天をしっかりきっちり自分の方に引き寄せて安全を確保してから。

 頼綱をキッ!と睨んで抗議したら、「ん? さっき言わなかったかな? 俺は食べる主義だよ?って」とか。


 わ、私、食べ物じゃないっ!
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