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Epilogue
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「食事は八千代さんにも協力してもらって、なるべく少量を小分けに摂るようにしてるだろう?」
頼綱の言葉にうんうん、とうなずく。
途端込み上げてきた何となくしょっぱい生唾に、口元を押さえて立ち止まる。
うー、まずい。
なんかまた気持ち悪くなってきた……。
「頼綱……。飴玉……」
言ったら、スーツのポケットから取り出した飴を、「ゆっくりお食べ」って包みをほどいてそっと口に入れてくれる。
飴。自分で持っていたら、つい高速でコロコロコロコロ転がして次々に食べてしまうから、一緒にいる時は頼綱に管理してもらっているんだけど。
「あ、この味。懐かしいっ」
出会ったばかりの日、鰻味のファーストキスを嘆いた私に、頼綱が桃味とレモン味の飴で誤魔化そうとしてくれたことがあったのをふと思い出す。
私の言葉に、頼綱が「よく覚えていたね」って笑って。
「頼綱だって」って言いながら、ふたりで顔を見合わせてクスクス笑って。
「出来ればこの飴を食べ終わるまでにお買い物済ませちゃいたいな?」
桃の吐息を吐きながら、頼綱の服の裾をチョンチョンと引っ張って言ったら、「承知した」ってその手をギュッと握られた。
「おからパウダーと飴とラムネとゼリー。他には何がいいかな?」
頼綱とふたり買い物カートを押しながら、空腹時にちょこちょこつまめる低カロリーの食べ物をカゴに入れていく。
おからパウダーは、最初おからクッキーを買おうと思ったんだけど、豆腐コーナーにパウダーが売られているのを発見して、頼綱と「家で作った方が安心かな?」って話になって。
八千代さんに電話で相談したら『お任せください。美味しくて低カロリーなのをお作りいたします!』って太鼓判を押して頂けたから甘えちゃうことにしたの。
「あとは――野菜スティックとかモグモグするのもありかも?」
何の気無しに言ったら、頼綱が瞳を見開いて。
「それはまた、肉食の花々里にしては珍しくウサギみたいなことを言うね」
って笑うの。
に、肉食って! 確かにお肉もお魚も大好きだけど、私、お野菜も好きなのにっ。
「ウサギでも何でも構わないのよぅ。なるべく太りにくい食べ物をムシャムシャしたいのっ」
力説して眉根を寄せる私に、「〝Auberge Vie de lapin〟に連れて行った時、キミが兎より鰻がいいってゴネたのを思い出すよ」って頼綱が肩を震わせて。
羽の生えたうさぎというホテルでデートした時の話だ。
「べっ、別にゴネたりなんかしてないよ?」
唇をとんがらせて言ったら、「そうだっけね?」と意味深に視線を流される。
あの日、ホテル内にあったお洒落なお店の前で、「Vie de lapinは、フランス語でウサギ生活という意味だよ」と教えてくれた頼綱に、ウサギからウナギを連想した私が、「鰻は何て言うの?」って聞いたら「anguille」だと教えてくれて。
うん、私、その時、「ウナギ生活!」って言ったんだよね。
因みにAubergeはレストランっていう意味だと解説された私は、ウサギのイメージが強過ぎて「野菜料理ばかりは嫌だよ?」って心の中で思ったの。
けど、今の口ぶりからすると、頼綱は全部お見通しだったのかも?
くぅ~。
記憶力良すぎも、察しの良すぎも、やっぱり何だか腹立たしいですっ!
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※この辺り(Auberge Vie de lapin)についての詳しい内容は、エブリスタ内のスター特典①『羽の生えたうさぎ』に書いてあるお話です。
アルファポリスの方では本編完結後に掲載していきたいと思っていますので、今しばらくお待ちいただけたら幸いです。
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「食事は八千代さんにも協力してもらって、なるべく少量を小分けに摂るようにしてるだろう?」
頼綱の言葉にうんうん、とうなずく。
途端込み上げてきた何となくしょっぱい生唾に、口元を押さえて立ち止まる。
うー、まずい。
なんかまた気持ち悪くなってきた……。
「頼綱……。飴玉……」
言ったら、スーツのポケットから取り出した飴を、「ゆっくりお食べ」って包みをほどいてそっと口に入れてくれる。
飴。自分で持っていたら、つい高速でコロコロコロコロ転がして次々に食べてしまうから、一緒にいる時は頼綱に管理してもらっているんだけど。
「あ、この味。懐かしいっ」
出会ったばかりの日、鰻味のファーストキスを嘆いた私に、頼綱が桃味とレモン味の飴で誤魔化そうとしてくれたことがあったのをふと思い出す。
私の言葉に、頼綱が「よく覚えていたね」って笑って。
「頼綱だって」って言いながら、ふたりで顔を見合わせてクスクス笑って。
「出来ればこの飴を食べ終わるまでにお買い物済ませちゃいたいな?」
桃の吐息を吐きながら、頼綱の服の裾をチョンチョンと引っ張って言ったら、「承知した」ってその手をギュッと握られた。
「おからパウダーと飴とラムネとゼリー。他には何がいいかな?」
頼綱とふたり買い物カートを押しながら、空腹時にちょこちょこつまめる低カロリーの食べ物をカゴに入れていく。
おからパウダーは、最初おからクッキーを買おうと思ったんだけど、豆腐コーナーにパウダーが売られているのを発見して、頼綱と「家で作った方が安心かな?」って話になって。
八千代さんに電話で相談したら『お任せください。美味しくて低カロリーなのをお作りいたします!』って太鼓判を押して頂けたから甘えちゃうことにしたの。
「あとは――野菜スティックとかモグモグするのもありかも?」
何の気無しに言ったら、頼綱が瞳を見開いて。
「それはまた、肉食の花々里にしては珍しくウサギみたいなことを言うね」
って笑うの。
に、肉食って! 確かにお肉もお魚も大好きだけど、私、お野菜も好きなのにっ。
「ウサギでも何でも構わないのよぅ。なるべく太りにくい食べ物をムシャムシャしたいのっ」
力説して眉根を寄せる私に、「〝Auberge Vie de lapin〟に連れて行った時、キミが兎より鰻がいいってゴネたのを思い出すよ」って頼綱が肩を震わせて。
羽の生えたうさぎというホテルでデートした時の話だ。
「べっ、別にゴネたりなんかしてないよ?」
唇をとんがらせて言ったら、「そうだっけね?」と意味深に視線を流される。
あの日、ホテル内にあったお洒落なお店の前で、「Vie de lapinは、フランス語でウサギ生活という意味だよ」と教えてくれた頼綱に、ウサギからウナギを連想した私が、「鰻は何て言うの?」って聞いたら「anguille」だと教えてくれて。
うん、私、その時、「ウナギ生活!」って言ったんだよね。
因みにAubergeはレストランっていう意味だと解説された私は、ウサギのイメージが強過ぎて「野菜料理ばかりは嫌だよ?」って心の中で思ったの。
けど、今の口ぶりからすると、頼綱は全部お見通しだったのかも?
くぅ~。
記憶力良すぎも、察しの良すぎも、やっぱり何だか腹立たしいですっ!
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※この辺り(Auberge Vie de lapin)についての詳しい内容は、エブリスタ内のスター特典①『羽の生えたうさぎ』に書いてあるお話です。
アルファポリスの方では本編完結後に掲載していきたいと思っていますので、今しばらくお待ちいただけたら幸いです。
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