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7.どちらに転んでも損はない*

しゅ、うたろぉさっ。私……もぅっ

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「しゃわ……?」

 熱に浮かされたトロンとした目で、日織ひおり修太郎しゅうたろうを見上げてくる。

 修太郎がもてあそんだ日織の愛らしくも小さな肉刺まめは、常よりもぷっくり腫れて、ツンッと勃ち上がっていた。
 先程そこを刺激されて、軽く一度絶頂に達した日織は、その余韻で意識がふわふわと定まっていない。

 シャワーの言い方がどこか舌っ足らずで、意味を理解出来ていないのではないかと修太郎は懸念した。

「僕はね、このままの方が日織さんの香りを感じられて好きなんですけど……日織さんはそういうのはお嫌だと言って、いつもとても気になさるでしょう?」

 耳元で低く問いかけておいて、ツプッ……と指先をほんの少しだけ、日織の熱く泥濘ぬかるんだ入り口に挿し込む。
 と、その刺激で意識が急速に浮上したらしい日織が、驚いたようにギュッと脚を閉じて邪魔をしてきた。

「あ、ダメなのですッ。私まだ……」

「ええ、まだお風呂に入れていませんね?」

 いつも情事の前には身体を清めたがる日織だ。
 情欲にまみれた気持ちと、理性との狭間はざまで揺れる、色素の薄いブラウンアイをわざと覗き込んで、修太郎しゅうたろうは日織の中に埋めた指を、クチュッという濡れた水音とともに、もう少しだけ奥へと進めた。

「や、――ぁっ」

 これで、劣情に飲まれてそのまま続行になるか、それとも理性が優って風呂を優先させるか。

 日織がどちらを選んでも、修太郎は濃厚な妻の香りを嗅ぎながら行為に及ぶことができるか、もしくは愛する女性と一緒に入浴して、その身体を隅々まで洗い清める権利を有するかの、二者択一になる。
 つまり、どちらに転んでも全くもって損にはならないのだ。

 だからこそ、おおらかな気持ちで日織に決めてもらおうと構える事ができる。


「しゅ、うたろぉさっ。私……もぅっ」

 言って、ギュッと自分にしがみついて頬を擦り寄せてきた日織に、修太郎は彼女が前者を選んだことを悟った。


***


 そうと分かれば、サニタリールームこんなところに長居は無用だ。

 日織ひおりからの反撃がなければ、修太郎しゅうたろうは洗面台前で彼女を責めて攻めてせめ抜いてから、嫌というほど乱れさせてやるつもりだった。
 鏡に映る自身のあでな姿を無理矢理日織に見させてから、彼女をそうしたのは、他ならぬ修太郎なのだと記憶に刻み込んで――。
 そうして疲れ果てるまで抱き潰した日織を、浴室で隅々まで洗い清めてやろう、その後はまたベッドで、とか考えていたりしたのだ。

 当初の予定とは随分違ってしまったけれど、嫉妬まみれのモヤモヤした気持ちのまま日織を責め立てるように抱かなくて良かったと、少し冷静になった頭の修太郎は、心底ホッとしていたりする。

 せっかくホテルの一室を取ったのだ。

 今は、常とは違った雰囲気の中、愛する妻をデロッデロに甘やかしてとろけさせたいと思っている。

(やはり日織さんには敵いませんね)

 色んな意味で、修太郎にとって日織ほど最強で、守ってあげたくなるほど愛しくて、さまざまな面において水の合う女性はいないのだと、先程からのアレコレで改めて気付かされた。
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