偽りのメス
春日真之介は、喉の奥に小さな違和感を覚えた。
食事中にむせ、米粒が咳とともに飛び出す――
自宅なら笑い話で済むが、接待の席では致命的だ。
評判の高い藪坂病院で検査を受けた真之介は、
頸部に小さな腫瘍が見つかり、
名医として知られる院長・藪坂直哉の手術を受けることになる。
だが手術当日、麻酔に沈んだはずの意識はなぜか冴え、
体は動かないのに、耳だけが鮮明に働いていた。
聞こえてきたのは――
失敗続きで“藪”と噂される弟・直弼の声であった。
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