婚約破棄された経理令嬢は、王宮財務室で溺愛されています
「地味な女だ。侯爵夫人の器ではない」
十年間、無償で侯爵家の帳簿を管理してきた子爵令嬢リディアは、大勢の貴族が見守る夜会で婚約を破棄された。 けれど彼女が真っ先に確認したのは、たったひとつ。
「引き継ぎは、なしでよろしいんですね?」
十年分の帳簿を頭に入れたまま、リディアは侯爵家を去る。 そんな彼女に声をかけたのは、冷徹無比と噂される若き財務卿アルヴィン・グレイシス公爵だった。
「あの帳簿は、美しかった。……あれは、事務ではない。芸術だ」
王宮財務室に迎えられたリディアを待っていたのは、彼女の仕事にきちんと名前をつけてくれる同僚たちと、なぜか毎日となりの席に椅子を運んでくる小さなお嬢さま。 そして――バツイチと噂される、不器用すぎる上司の、静かな溺愛だった。
一方その頃、侯爵領の帳簿は音を立てて崩れ始めていて。 納税申告の期限まで、あと九十日。
数字は、嘘をつかない。 私を安く見積もった人たちの帳簿は、いつか必ず、合わなくなる。
※簿記の知識ゼロでも読めます。
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