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亡国王子、ふわふわパンを作る 2
しおりを挟むヒノモトでは30分とかかかってた一次発行がほんの数分で終わった。……あれ?酵母作ってた時も思ったけど、この世界って菌の増殖早くない?食用菌にはありがたいけど、食中毒とか……ぶるぶる。洗浄、消毒、大事!
「てきとうにきって、まるめます」
「ほいほい。んで?焼くんですな?」
「そのままにじはっこうです」
「……はあ~…『はっこう』ってやつは時間がかかるんですなあ…」
早い方だよ?
丸める作業は俺にだってできる。フィアツェンさんに降ろしてもらって(……うん、いつもの抱っこスタイルだった…)踏み台を出してもらって、まあるく丸めて、丸め終わりは下にする。
「……アールツナイの作ったものは俺が食べる」
「アッ、ハイ」
フィアツェンさんが食い入るようにパン生地を見ていた。わかってたよー。わかってたけどねぇ…。
俺が形成した分は、目印にクルミを砕いた物を乗せる。焼くと2倍に膨れるから間隔をあけて鉄板に並べて、ギュッと固く絞った布をかけて2次発酵。すぐにむくむく膨れた生地を予熱済みのオーブンに入れる。(ヴィドスさんが)
綺麗に焼き上がった丸パンは、甘く香ばしい『パン』の匂いだった。
う…う……うわああい!パンだあ!!
恭しくフィアツェンさんに差し出されたふわふわパン。フィアツェンさんが手に取って半分に割ると、ふわっと微かにリンゴの香りがした。
「あー…」
口を開けて待ってるのに、フィアツェンさんはまず自分で食べちゃった。ええ~!あーん!ずるーい!
「……ふむ。柔らかい…それに酸味もない…‥甘ささえある……」
そーだよ!天然酵母のパンなんだから!!
「あー!」
はやく!早く!とジタバタすると、フィアツェンさんはようやくふわふわパンを俺の口元に持ってきてくれた。
「…はむっ…!………んんんにゅ~!」
あっま~い!これだよ、これこれ!やわらか~い!パン半分を夢中で平らげると
『うぉっほん!』
神託で咳払いはやめてね女神。
慌てて籠に盛られたふわふわパンがワイン瓶の前にお供えされる。
「いちゅかねえ、めしあがれえ」
『はぁい♡』
シュッて消えた。シュッて。
『キャア♡』とか『もっちふわぁ!』って聞こえてたから喜んでると思う。次の日の朝の俺の枕元には『美味しいスローライフ』とかいうレシピ本が置いてあった。やったね!レシピゲットぉ!
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