くもらぬ月 ――幕末を照らした無私の歌人・大田垣蓮月――
愛する夫も、我が子たちも、父すらも——大切な者をすべて奪われた女がいた。
幕末の京。絶望の底で冷たい泥を握りしめた彼女は、黒い髪を切り「蓮月」と名を改める。
泥から土を丸め、鉄筆で和歌を刻む「蓮月焼」を生み出しながら、彼女は世間の執着や利権を風のように受け流して生きていく。
やがて彼女の庵には、画家を志す若き日の富岡鉄斎、倒幕の志を燃やす野村望東尼、そして殺気立った新選組や志士たちが迷い込んでくる。
天下を揺るがす大乱のなか、一切の私心を捨てて生きた一人の老尼が残した言葉と器は、西郷隆盛の胸をも穿ち、幕末の京都を静かに照らしていく。
実在した伝説の女歌人・陶芸家「大田垣蓮月」の八十五年の生涯を描いた歴史短編(全5話)。
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