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第三章⑥
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時間を見つけては本を読み漁ったけれど、これと言った情報を得られなかったわたしは、あることに思い至ったの。
それは、わたしの体はまだ無事なのだろうかと。
これまで、国中を飛び回っていたわたしは、自分の体を放置し続けていたのよ。
体に戻る方法を探していたけれど、肝心の体が無かったらと考えてぞっとした。
王子殿下が眠ったのを見届けたわたしは、自分の体がどうなっているのかを確認するために王宮からフェンサー伯爵家に向かったわ。
シンと静まっている生家にどれくらいぶりに戻っただろうか。
ふと、屋敷内の雰囲気がおかしいことに気が付く。
人の気配が少なすぎる点と、屋敷内が少し荒れていたのだ。
不思議に思いつつも、まずは自分の体がどうなっているかを確認すべく、わたしの部屋へと向かったのよ。
扉の前で躊躇ったのは一瞬で、覚悟を決めて扉を通り抜けたわたしはほっと息を吐いていたわ。
昔、ここを飛び出した時のまま、まるで時間が止まったかのように何も変わっていなかった。
幼く見えた、十五歳のわたしが結晶に閉じ込められるようにして眠っていたわ。
何かの拍子に体に戻れないかと、結晶の中の体に入ってみたけど、他の物と同じように素通りしてしまっただけで、何も起こらなかったことにわたしは少しだけガッカリしていた。
だけど、結晶を通り抜けた時、何か嫌な感じがしたの。
じっと結晶の中を見ていると、中に黒ずんだ何かがあることに気が付いたわたしは、それに目を凝らしたわ。
じっと見つめること数秒。
「あっ……。花びらかしら?」
どうして花びらが?
そんなことを考えていたわたしは、ぐらりと視界が揺れたように錯覚していた。
アストラル体になって、寒さなんて感じたことなんてなかったのに、どうしようもなく全身がガクガクと震えるのと止められなかった。
花びら……。
そうだわ。あの時、わたしは花束を……。
仲の良かった令嬢に婚約祝いとしてもらったのは大輪の花束だったわ……。
まさかと、考えすぎだと、否定したかった。
だからわたしは、自分の考えを否定するためにある場所に一目散に飛んだわ。
そこは……。
わたしがこれまで踏み入ることのなかった王宮の中心。
王族の居住区画だった。
一つ一つの部屋を通り抜け、わたしがたどり着いた部屋には二人の人物が眠っていたわ。
警備の配置、控えている侍女の人数、そして豪奢な調度品。
恐らく、ここで眠っているのが現国王陛下と王妃陛下でしょうね。
わたしの考えが間違っていてほしいと願いつつも、ベッドで眠る二人の人物にそっと近づく。
手前の人物の仰向けに眠る姿を見て、わたしは時の流れを実感していた。
その人は、当時わたしの婚約者になるはずの人の面影たあったわ。
「王太子殿下……。だいぶ……。老けた……ような気がするわ。時の流れは残酷だわ……。ん? ということは、王子殿下の父親がこの人ってことでいいのかしら? そう思うと、憎らしい寝顔ね。ふん。悪夢にうなされるといいわ!!」
王子殿下につらい思いをさせている元凶だと思うと急に憎らしく思えてしまったわたしは、呪いの言葉を吐き出していたわ。
実際に効果なんてないだろうけど、気の済むまで呪いの言葉を吐き出し終えたわたしは、国王陛下の隣に眠る人物に視線を移していた。
思い違いでありますようにと、そう願いつつ国王陛下の隣で眠る人物の寝顔を覗き込んだの。
「そ……んな……。どうして……?」
信じたくなかった。
けれど、すべてが繋がってしまったの。
国王陛下の隣に眠っていたのは、大人の姿に成長した仲の良かった令嬢だったのよ……。
それは、わたしの体はまだ無事なのだろうかと。
これまで、国中を飛び回っていたわたしは、自分の体を放置し続けていたのよ。
体に戻る方法を探していたけれど、肝心の体が無かったらと考えてぞっとした。
王子殿下が眠ったのを見届けたわたしは、自分の体がどうなっているのかを確認するために王宮からフェンサー伯爵家に向かったわ。
シンと静まっている生家にどれくらいぶりに戻っただろうか。
ふと、屋敷内の雰囲気がおかしいことに気が付く。
人の気配が少なすぎる点と、屋敷内が少し荒れていたのだ。
不思議に思いつつも、まずは自分の体がどうなっているかを確認すべく、わたしの部屋へと向かったのよ。
扉の前で躊躇ったのは一瞬で、覚悟を決めて扉を通り抜けたわたしはほっと息を吐いていたわ。
昔、ここを飛び出した時のまま、まるで時間が止まったかのように何も変わっていなかった。
幼く見えた、十五歳のわたしが結晶に閉じ込められるようにして眠っていたわ。
何かの拍子に体に戻れないかと、結晶の中の体に入ってみたけど、他の物と同じように素通りしてしまっただけで、何も起こらなかったことにわたしは少しだけガッカリしていた。
だけど、結晶を通り抜けた時、何か嫌な感じがしたの。
じっと結晶の中を見ていると、中に黒ずんだ何かがあることに気が付いたわたしは、それに目を凝らしたわ。
じっと見つめること数秒。
「あっ……。花びらかしら?」
どうして花びらが?
そんなことを考えていたわたしは、ぐらりと視界が揺れたように錯覚していた。
アストラル体になって、寒さなんて感じたことなんてなかったのに、どうしようもなく全身がガクガクと震えるのと止められなかった。
花びら……。
そうだわ。あの時、わたしは花束を……。
仲の良かった令嬢に婚約祝いとしてもらったのは大輪の花束だったわ……。
まさかと、考えすぎだと、否定したかった。
だからわたしは、自分の考えを否定するためにある場所に一目散に飛んだわ。
そこは……。
わたしがこれまで踏み入ることのなかった王宮の中心。
王族の居住区画だった。
一つ一つの部屋を通り抜け、わたしがたどり着いた部屋には二人の人物が眠っていたわ。
警備の配置、控えている侍女の人数、そして豪奢な調度品。
恐らく、ここで眠っているのが現国王陛下と王妃陛下でしょうね。
わたしの考えが間違っていてほしいと願いつつも、ベッドで眠る二人の人物にそっと近づく。
手前の人物の仰向けに眠る姿を見て、わたしは時の流れを実感していた。
その人は、当時わたしの婚約者になるはずの人の面影たあったわ。
「王太子殿下……。だいぶ……。老けた……ような気がするわ。時の流れは残酷だわ……。ん? ということは、王子殿下の父親がこの人ってことでいいのかしら? そう思うと、憎らしい寝顔ね。ふん。悪夢にうなされるといいわ!!」
王子殿下につらい思いをさせている元凶だと思うと急に憎らしく思えてしまったわたしは、呪いの言葉を吐き出していたわ。
実際に効果なんてないだろうけど、気の済むまで呪いの言葉を吐き出し終えたわたしは、国王陛下の隣に眠る人物に視線を移していた。
思い違いでありますようにと、そう願いつつ国王陛下の隣で眠る人物の寝顔を覗き込んだの。
「そ……んな……。どうして……?」
信じたくなかった。
けれど、すべてが繋がってしまったの。
国王陛下の隣に眠っていたのは、大人の姿に成長した仲の良かった令嬢だったのよ……。
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