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5 ベルは・・・・・・

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そこにはベルが立っていた。鮮やかな深紅のドレス姿はまさに悪女に相応しい。
「何をしておりますの? 殿方2人でみっともない! ここは男子禁制ですわよ」
ツカツカとマヌーバー殿下とオスカー様に歩み寄ると、簡単にその手をねじ伏せて地面にたたきつけた。

「うわぁ~~、なにすんだよぉ! この怪力女め。腕が折れる、折れる~~ぅ~~」
マヌーバー殿下は両腕をぶらつかせてジタバタと足を動かした。

「あまり暴れるようならその無駄な足も折ってさしあげましょうか?」
ベルは絶対零度の声をだしながらゾッとするような笑みを浮かべた。

「うわぁ~~。痛い、痛い。やめろぉ~~。肩が・・・・・・肩が・・・・・・」
一方、オスカー様は肩を抑えて地面をのたうちまわっていた。

「ここは男子禁制の修道院ですわ! アホな男どもは帰っていただきましょう」

「シクラメル公爵令嬢! お前は絶対に許さないぞ! 明日、お前を罪人にしてやる。裁判だ! 死刑だ! 僕は王子なんだぞ! いくら筆頭公爵令嬢だからって僕に怪我をさせて許されると思うなよ! あ、そうだ! ・・・・・・いいことを思いついたよ。交換条件だ。許してやるから僕の妻になって後ろ盾になれ! お前の方がアニエスより金持ちだもんな」

「だったら、アニエスは僕がもらいます! アニエス、お前が僕を誘って修道院の庭園に呼びつけたことにしよう。マヌーバー殿下もお前が呼びつけたことにすればアニエスが毒婦だと噂が流れる。そうなりたくなければ大人しく僕のものになれ!」

「ばかばかしい。明日、王宮で会いましょう。裁判でもなんでもすればいい」
ベルは私に自分のショールをかけると修道院の部屋まで送ってくれた。

「ベルは・・・・・・なのね? なんで、黙っていたの?」
「君がすっかり私を忘れていたからね・・・・・・ちょっと意地悪しすぎたな・・・・・・ごめんね」



☆彡★彡☆彡視点変わります(俯瞰視点)



国王陛下と王妃殿下がいらっしゃる謁見の間に神妙な顔つきをしたマヌーバー殿下とオスカー侯爵嫡男がおります。その一段低い場所にはマヌーバー殿下の母親の側妃も控えておりました。

もちろん待っているのはベル・シクラメル公爵令嬢とアニエス・フィルム公爵令嬢です。時間通りにやって来た二人の令嬢に罵倒を浴びせるマヌーバー殿下とオスカー侯爵嫡男。

「アニエスは僕達に修道院で逢い引きしようと無理矢理誘ってきた毒婦です。本当は行きたくなかったんだ! アニエスに『こんなことをしてはいけない!』とお説教していたらベルがいきなり現れ大怪我を負わされました」とマヌーバー殿下。

「そうです! 僕達は被害者です! アニエスは僕達を誘惑しようとした毒婦で、ベルは僕達に大怪我を負わせた乱暴女です!」とオスカー様。

「修道院にも守りの門番はおりますよ。けれど私が門を通るときには7人の門番は眠りこけておりました。周囲には妙な香りが漂っていた。これは側妃様の愛用の眠り薬の香ではありませんか? 修道院の門の近くに落ちていたものです。 こんなものまで用意して誘惑されたなどと被害者づらをするなんて無理がありますよね? 」
香を焚いた後の灰のようなものをベルはハンカチに包んで持っていて国王陛下に差し出しました。

「鑑定をさせよう。側妃の眠り薬は東洋から仕入れた貴重なものだ。アーバスノット国で同じ香を持っている者はいないはずだ。側妃よ、不眠症で悩んでいるお前の為に仕入れた特別な香をまさか修道院に侵入しようとする息子に与えたわけではあるまいな?」

「そんなことはしておりません。私だとてマヌーバーが修道院に忍び込むなどの計画は初めて聞きましたのに」

「なっ、母上! 僕を裏切るのですか? 香を持たせたのは母上ですよね? これで眠らせれば容易に修道院に潜り込めるとおっしゃったじゃないですか?」

「そんなことは申しておりませんよ。いい加減なことを言わないでちょうだい!」
側妃とマヌーバー殿下は口汚く罵りあい、最早この二人が協力関係にあったことは明確になったのでした。

調べ上げるうちに第1王子の毒殺未遂にも側妃が関与したことが発覚し、後に側妃は断頭台の露と消えました。マヌーバー殿下は毒殺未遂には関わっていないものの、アニエスを暴行しようとしていた件と修道院への侵入問題で王族からは籍がなくなり、奴隷に堕とされたのでした。

本来であれば王家の世継ぎを暗殺しようとした一族郎党は死罪なのですが、奴隷に留まったのには理由があります。

「こいつは奴隷になりたいと前から希望していましたからね。恋の奴隷だっけ? 恋はつかないけれど本物の奴隷になれたね? 本望だろう?」
急にハスキーな声に変わったシクラメル候爵令嬢に王妃殿下が笑いながらおっしゃいました。
「アレクサンダー・ベルルーク・アーバスノット。早く本来の姿に戻りなさい。私の息子よ、やっと女装がとけるわね!」

「はい、母上!」


୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧

おまけつきます。ちょっと5話ではたりませんでした。続けて投稿しますのでよろしくお願いします。(•́ε•̀;ก)💦・・・・・・

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