共犯者 ~報酬はお前~

深冬 芽以

文字の大きさ
上 下
37 / 254
第六章 対立

しおりを挟む

「立波を手に入れる為と言っても、色気も可愛げもない三十女じゃなく、若くて可愛い桜と結婚出来て、俺はラッキーだったな」

「絶対、認めないから……」

「認めさせてやるよ。桜ももう十九歳だ。お前の母親がお前を生んだ年だよな?」

 今度はドクンッドクンッと二度、心臓が軋んだ。

「どういう――」

「一年ぶりの再会に誕生日プレゼントは婚約指輪。盛り上がり過ぎてうっかり子供が出来る……とか? ありがちだよな?」

「やめて! これ以上、桜に関わらないで!!」

 感情が乱され、思わず声が荒ぶる。

「じゃあ、別れろ」

「え――」

「槇田部長と別れろよ。そうしたら、桜の誕生日プレゼントは箱に詰めて航空便に載せてやるよ」

 なぜか、迷わなかった。

 自分でも驚くほど、なんの迷いもなく、言葉が出た。

「別れない」

「は?」

「雄大さんと別れたりしない」と、もう一度はっきりと言う。

「結婚するから」

「利用されてんのもわかんねぇのかよ! 社長の椅子に座った瞬間から、お前なんて名ばかりの妻だ。見向きもされねぇよ。それどころか、社長室に何人の女を連れ込むか――」

「あんたと一緒にしないで!」

 一瞬、黛の言葉を想像してしまった。



 わかってる……。



 雄大さんが私じゃない女を抱く場面。



 私は報酬だもの。



「何を言われても、雄大さんとは別れない」



 今はこの身体を気に入って、抱いているだけ。

 飽きれば、結婚を続ける必要はなくなるだろう……。



「桜を帰国させるぞ」



 私に飽きても、雄大さんはきっと約束は守ってくれる。

 たとえ、他の女を抱いていても――。



「お前らより早く、結婚する」



 それに……。



「させない」



 私が……出来ない。



「桜はあんたと結婚させない」



 別れるなんて、出来ない。



「私は雄大さんと別れない!」



 別れたく――ない。



「絶対! 別れない!!」

 私は勢いよく、会議室を飛び出した。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

BL / 連載中 24h.ポイント:6,184pt お気に入り:948

一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:802pt お気に入り:1,125

ある公爵令嬢の生涯

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,849pt お気に入り:16,126

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,578pt お気に入り:3,112

一途な淫魔の執着愛 〜俺はお前しか抱かない〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:190

婚約破棄されましたが、幼馴染の彼は諦めませんでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,421pt お気に入り:281

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,564pt お気に入り:3,569

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14,378pt お気に入り:3,342

処理中です...