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第六章 対立
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しおりを挟む「立波を手に入れる為と言っても、色気も可愛げもない三十女じゃなく、若くて可愛い桜と結婚出来て、俺はラッキーだったな」
「絶対、認めないから……」
「認めさせてやるよ。桜ももう十九歳だ。お前の母親がお前を生んだ年だよな?」
今度はドクンッドクンッと二度、心臓が軋んだ。
「どういう――」
「一年ぶりの再会に誕生日プレゼントは婚約指輪。盛り上がり過ぎてうっかり子供が出来る……とか? ありがちだよな?」
「やめて! これ以上、桜に関わらないで!!」
感情が乱され、思わず声が荒ぶる。
「じゃあ、別れろ」
「え――」
「槇田部長と別れろよ。そうしたら、桜の誕生日プレゼントは箱に詰めて航空便に載せてやるよ」
なぜか、迷わなかった。
自分でも驚くほど、なんの迷いもなく、言葉が出た。
「別れない」
「は?」
「雄大さんと別れたりしない」と、もう一度はっきりと言う。
「結婚するから」
「利用されてんのもわかんねぇのかよ! 社長の椅子に座った瞬間から、お前なんて名ばかりの妻だ。見向きもされねぇよ。それどころか、社長室に何人の女を連れ込むか――」
「あんたと一緒にしないで!」
一瞬、黛の言葉を想像してしまった。
わかってる……。
雄大さんが私じゃない女を抱く場面。
私は報酬だもの。
「何を言われても、雄大さんとは別れない」
今はこの身体を気に入って、抱いているだけ。
飽きれば、結婚を続ける必要はなくなるだろう……。
「桜を帰国させるぞ」
私に飽きても、雄大さんはきっと約束は守ってくれる。
たとえ、他の女を抱いていても――。
「お前らより早く、結婚する」
それに……。
「させない」
私が……出来ない。
「桜はあんたと結婚させない」
別れるなんて、出来ない。
「私は雄大さんと別れない!」
別れたく――ない。
「絶対! 別れない!!」
私は勢いよく、会議室を飛び出した。
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