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第3話守護獣視点

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 俺はこの国の守護獣だ。
 建国王との約束でこの国を護ることになっている。
 だが、当然だが双務契約となっている。
 簡単な話、互いに護らなければいけない事があり、その約束を破った時点で契約を解除してもいいことになっている。

 だが、俺はいつも人間を好きになり過ぎる。
 ついつい人間を庇い過ぎるようで、神や悪魔から敵意を向けられることが多い。
 五年前にも人間に悪神と呼ばれる神に不意を突かれ、呪いをかけられてしまった。
 完全な状態であれば、あいつごときには負けはしないのだが、人間が俺との契約を蔑ろにしていたため、能力が著しく低下してしまっていたのだ。

 身体を隠すこともできなくなり、かろうじて犬に姿を変えて、敵意を持つ神や悪魔にも、人間にも正体を隠したのだが、あのまま放置されたら死んでいただろう。
 私との契約を蔑ろにするこの国では、人間の心も荒んでいて、死にかけている犬を助けようとする者などいなかった。
 なかには地に倒れる犬姿の俺に、石を投げてくる者までいた。

 だが、オリビアは違った。
 家族の反対を押し切って、俺を助けてくれた。
 親身になって一年も看病してくれた。
 俺の心はこの国から離れ、オリビアで占められた。
 だが、この国との契約を解除すれば、この国は周辺国から攻め込まれる。

 いや、周辺国だけではなく、天災にも襲われる。
 俺が抑え続けていた分、色々なモノが溜まっているのだ。
 それが一気に現れたら、伯爵令嬢のオリビアもただでは済まない。
 そう思ったから、約束を破った醜いこの国の王族との契約を続けてやっていたというのに、事もあろうにオリビアを蔑ろにしおって!
 必ず報いを受けさせてくれる!

「ポーピーポー。
 行商人のチャーリーでございます!
 オリビア様はおられますか」

 また来やがったな、エロ行商人!
 俺のオリビアに色目を使いおって!
 本当ならとうの昔に殺してしまいたかったのだが、何かと不自由な荒地の生活では、行商人の存在は欠かせない。
 フィッツジェラルド王家の治める国など、いつでも滅亡させてやれるのだが、もう少しオリビアには穏やかな生活をさせてやりたい。

「オリビア様、今日は新しい服を持ってこさせていただきました。
 オリビア様ならとても似合うと思うのです」

「駄目よ、チャーリー。
 服より先に塩と香辛料が必要なの。
 魔獣肉は不味くはないのだけれど、毎日だと飽きてしまうのよ。
 それに、塩なしで荒地での生活は難しいわ。
 塩が不足すると身体が動かなくなってしまうのよ。
 だからまずあるだけ塩を頂戴な」

「ウウウウウウ!」

 チャーリーが暴利を貪ろうとするのを防がないといけない。
 前回の取引では、オリビアがチャーリーに騙されて、あまりにも不利な売買をさせられてしまった。
 今回はチャーリーを殺してでも正当な値段で取引させる。
 行商人が来なくなると不便だが、俺が人間に変身して買い物に行けばいいと、今気がついた。
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