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第三章
平民が消えた国 3
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ライアン殿下の『責任問題は後回し』という提案にレナード陛下は賛同し、この場で私達貴族に処罰が下されることはなかった。
だが、平民が逃げたことで国が回らないこの状況は変わらない。
さて、どうしたものかと頭を悩ませる私達にライアン殿下はある提案をした。
「フェガロフォス国に残った者達を身分関係なく王宮に集め、一旦ここで全員で生活するのはどうだろう?これ以上逃亡者を増やさないためにもお互いがお互いを監視し合える環境を作るのだ」
お互いがお互いを監視.....?
この提案に貴族達はざわめく。
逃げようと考えていた貴族達にとって、ライアン殿下の提案は地獄の入り口にしか見えないだろう。私もその提案が可決されるのは絶対に避けたい。
「ライアン、それは良い案だな。よし!フェガロフォス国国王として命ずる。国に残っている者全員、王宮に住みお互いを監視し合え!」
なっ....!?
レナード陛下がライアン殿下の提案に賛成してしまった。こうなってはもうどうすることも出来ない。
王宮に閉じ込められれば、最後だ....。
王宮から門まで馬を走らせても二時間は掛かってしまう。二時間もあれば、逃げたことがバレてしまうだろう。
「レナード陛下、一つよろしいでしょうか?」
「うむ。発言を許そう」
お父様!?
発言の許しを頂いたのは紛れもなく私の父。
一体、何を言うつもりなんでしょうか?
私だけではなく、この場に居る貴族達全員に見守られながら父は口を開いた。
「ライアン殿下の提案はとても素晴らしいと思います。そして、その優れた案を即可決なさったレナード陛下の行動力にも感服致しました」
......どうしたんでしょう?いきなり、レナード陛下とライアン殿下を褒め始めましたが...?
いつもは『愚王』とか『バカ殿下』とか言って馬鹿にしてらっしゃるのに。
レナード陛下とライアン殿下は父の褒め言葉に『ふふん!』と誇らしげに胸を張っている。
あれでしょうか?王宮で過ごすなら少しでも王族のご機嫌を取っておこう、みたいな...?
「そんな素晴らしいお二人が住んでいらっしゃる王宮にタダで住まわせてもらうのはこちらとしては大変心苦しい....。なので、一度領地へ戻り、貢物を用意させて頂きたいのですが....」
「ふんっ!まあ、そこまで言うなら一度領地へ戻ることを許そう。その代わり、ありったけの貢物を持って帰ってくるのだぞ」
「はい!必ず!レナード陛下の寛大なお心に感謝を...!」
そこで私はようやく父のこの不可解な行動の真意を読み解くことが出来た。
レナード陛下に貢物を用意したいという理由で領地へ戻り、急いで荷物をまとめて国を出る気なんだ...!
レナード陛下やライアン殿下を褒めちぎったのは少しでも機嫌が良い状態で本題に入りたかったから。このバカ親子の場合、機嫌が良いときほど判断力が鈍る。多分、お父様はそんなバカ親子の特性を利用して...!
さすがはお父様!
父の真意に気づいたのはどうやら私だけだったようで他の貴族達の頭にはまだ『?』マークが浮かんでいる。
他の貴族の皆さんにもこのことを教えて差し上げたいですが、それが出来る状況ではないので。
私と父は再度レナード陛下とライアン殿下に頭を下げながら、出入り口である扉へと歩みを進めた。
出口に向かう途中、バチッと婚約者であるウィル様と目が合う。
このままこの国を去れば、恐らくもう二度とウィル様には会えない。小さい頃からの許嫁同士で仲も良く政略結婚ではあったけど、私はずっと貴方のことが大好きだった。
でも、ごめんなさい....逃げる私をどうか許して。
泣きそうになるのをグッと堪え、私は玉座の間を出た。
後ろで扉が閉まる音がする。
「ごめんなさい....ウィル...」
愛しています、心の底から。
でも、ごめんなさい。
愛よりも私は自分の身の安全を優先しました。
屑で塵な私から一言だけ────....。
私を恨みながら、この国と共に滅んでください。
だが、平民が逃げたことで国が回らないこの状況は変わらない。
さて、どうしたものかと頭を悩ませる私達にライアン殿下はある提案をした。
「フェガロフォス国に残った者達を身分関係なく王宮に集め、一旦ここで全員で生活するのはどうだろう?これ以上逃亡者を増やさないためにもお互いがお互いを監視し合える環境を作るのだ」
お互いがお互いを監視.....?
この提案に貴族達はざわめく。
逃げようと考えていた貴族達にとって、ライアン殿下の提案は地獄の入り口にしか見えないだろう。私もその提案が可決されるのは絶対に避けたい。
「ライアン、それは良い案だな。よし!フェガロフォス国国王として命ずる。国に残っている者全員、王宮に住みお互いを監視し合え!」
なっ....!?
レナード陛下がライアン殿下の提案に賛成してしまった。こうなってはもうどうすることも出来ない。
王宮に閉じ込められれば、最後だ....。
王宮から門まで馬を走らせても二時間は掛かってしまう。二時間もあれば、逃げたことがバレてしまうだろう。
「レナード陛下、一つよろしいでしょうか?」
「うむ。発言を許そう」
お父様!?
発言の許しを頂いたのは紛れもなく私の父。
一体、何を言うつもりなんでしょうか?
私だけではなく、この場に居る貴族達全員に見守られながら父は口を開いた。
「ライアン殿下の提案はとても素晴らしいと思います。そして、その優れた案を即可決なさったレナード陛下の行動力にも感服致しました」
......どうしたんでしょう?いきなり、レナード陛下とライアン殿下を褒め始めましたが...?
いつもは『愚王』とか『バカ殿下』とか言って馬鹿にしてらっしゃるのに。
レナード陛下とライアン殿下は父の褒め言葉に『ふふん!』と誇らしげに胸を張っている。
あれでしょうか?王宮で過ごすなら少しでも王族のご機嫌を取っておこう、みたいな...?
「そんな素晴らしいお二人が住んでいらっしゃる王宮にタダで住まわせてもらうのはこちらとしては大変心苦しい....。なので、一度領地へ戻り、貢物を用意させて頂きたいのですが....」
「ふんっ!まあ、そこまで言うなら一度領地へ戻ることを許そう。その代わり、ありったけの貢物を持って帰ってくるのだぞ」
「はい!必ず!レナード陛下の寛大なお心に感謝を...!」
そこで私はようやく父のこの不可解な行動の真意を読み解くことが出来た。
レナード陛下に貢物を用意したいという理由で領地へ戻り、急いで荷物をまとめて国を出る気なんだ...!
レナード陛下やライアン殿下を褒めちぎったのは少しでも機嫌が良い状態で本題に入りたかったから。このバカ親子の場合、機嫌が良いときほど判断力が鈍る。多分、お父様はそんなバカ親子の特性を利用して...!
さすがはお父様!
父の真意に気づいたのはどうやら私だけだったようで他の貴族達の頭にはまだ『?』マークが浮かんでいる。
他の貴族の皆さんにもこのことを教えて差し上げたいですが、それが出来る状況ではないので。
私と父は再度レナード陛下とライアン殿下に頭を下げながら、出入り口である扉へと歩みを進めた。
出口に向かう途中、バチッと婚約者であるウィル様と目が合う。
このままこの国を去れば、恐らくもう二度とウィル様には会えない。小さい頃からの許嫁同士で仲も良く政略結婚ではあったけど、私はずっと貴方のことが大好きだった。
でも、ごめんなさい....逃げる私をどうか許して。
泣きそうになるのをグッと堪え、私は玉座の間を出た。
後ろで扉が閉まる音がする。
「ごめんなさい....ウィル...」
愛しています、心の底から。
でも、ごめんなさい。
愛よりも私は自分の身の安全を優先しました。
屑で塵な私から一言だけ────....。
私を恨みながら、この国と共に滅んでください。
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