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悪魔の様な貴方
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三日後、リリアンヌとラファエルは婚約した。
当然リリアンヌは無職になりラファエルの婚約者というラファエルの庇護下に置かれる事となった。
まぁ、リリアンヌの実家は伯爵家とは言え私兵もいないし、リリアンヌの身の安全の為の処置だろう。
そして事件は国王陛下の耳に入り首謀者の処分が早々に行われた。
その際、リリアンヌの純潔を避妊すらせず奪ってしまった事を知ると婚姻は急いだ方が良いだろうと言う事になりラファエルが予定より早く臣に下る事が決まり、急遽皇太后の持つ爵位の中から公爵位であるジュリエッティ公爵の位と領地が讓渡された。
☆
ジュリエッティ公爵となったラファエルの治める領地の屋敷。ラファエルとリリアンヌはまずはそちらに向かう事になった。
王都に近く港町を含む領地はとても賑やかで、リリアンヌは馬車の中から少しばかりはしゃいで物珍しい店が並ぶ通りを眺めていた。
着いたのは王都から馬車で2時間程の隣り街。街を見下ろすなだらかな丘の上に建つお屋敷は、一般の屋敷に比べると巨大な、まるで小国の城の様な美しい白亜の芸術的建造物だった。
そのお屋敷の一室で翌日から早々にリリアンヌは途方に暮れていた。
媚薬の後遺症がラファエルに現れたのだ。
「リリー、君の中は凄く気持ちいい」
「…ぅ、ぁぁ、んん」
「ほら、そんな物で顔を隠さないで」
そうは言っても今は真昼間だ。
使用人達は忙しなく動き回りリリーが嫁ぐ事はもちろん、新たな領主となるラファエルの為に屋敷の改装や家具の新調にてんてこ舞いになっているようだ。
それなのに、リリーは着いた翌日からこんなあられもない姿でラファエルに抱かれている。
ソファでお尻を高く上げたリリアンヌはラファエルに後ろから突き上げられてはしたなく喘ぐ口を実家から持ってきた巨大なクマのテディベアで塞ぎ凌いでいるのだ。
現在リリアンヌはラファエルの婚約者となり、結婚までの間に高位貴族の妻として恥ずかしくないマナーや知識を詰め込む為花嫁修業の名目でラファエルの屋敷に住むことになった。
ラファエルが王都に戻る場合はリリアンヌも王都にある屋敷に着いていく予定だ。
だと言うのに、ラファエルは朝も昼も夜も関係無しに媚薬の効果がぶり返しリリアンヌを襲うのだ。
「ゃ、ラファエル様」
リリアンヌは取り上げられた巨大なテディベアに手を伸ばす。しかしすぐにラファエルによって突き上げられ快感に仰け反った。
「あぁっ…あっ…んっ…っ…ふっ…んんっ!」
あられもない声を上げまいと奥歯を噛み締める。
先程廊下を足早に通り過ぎる音がしたのに、結局喘ぎ声が漏れてしまった。
誰かに聞かれてしまったのではと真っ赤になったリリーをラファエルはニヤリと笑って見ている。
「リリー、気持ちいい時はちゃんと声を出すんだよ」
リリアンヌは更に顔を赤くして首を振る。
「ラファエル様こんな、やっ、あっ…あぁっ」
リリアンヌは自分が何を言うつもりだったのかもあやふやになった思考でやっぱり内心首を傾げずにはいられない。
なぜこんな事態になってしまったのだろう。
来月には従兄弟のジョニーと婚約する予定だったリリアンヌがいきなり王弟であるラファエルと早急に結婚したいとの話に、父はもちろん仰天した。
ラファエルが直々にリリアンヌと父の元に赴き、改めて婚約期間の短さの謝罪と今後の跡取り問題を含む婚姻の話し合いをした。母は舞い上がってリリアンヌに良くやったとばかりにサムズアップする程に興奮していた。
まぁ、母も従兄弟の自惚れ屋ジョニーとの話に難色を示していたので心配事が消えて、棚からぼたもち状態だった為舞い上がってしまったのだろう。
リリアンヌとしても、ジョニーの事が大嫌いだった為、逆にラファエル様に襲われた事は良かったのでは?と最近は思い始めていた。
ジョニーはリリアンヌが自分に惚れ込んでいるから仕方なく結婚するのだと周りに吹聴していた。
それを知ったのは友人のクリスティナが夜会で聞いたのだけど、本当にアレに惚れてしまったのかと事実確認をする為に驚愕の表情で乗り込んで来たからだ。
たまたま女官の仕事が数日お休みになり両親にもたまには戻って来いと言われ丁度その日は伯爵家の領地にある屋敷に戻っていた。
クリスティナはアネットと仲が悪く、アネットと出くわしてしまう確率の高い我が家には滅多に現れない。
「そんな訳ない!あんな自惚れジョニーなんて好きなわけないじゃない」と言うと安心した様に納得した。
突然の訪問などクリスティナ的にもやりたくないことだったに違いなく。幸いアネットはエドアルドとデートに忙しくあの日以来我が家にあまり来なくなっていた。
しかし、ラファエルが訪れた日はどこから聞きつけたのかいきなり現れた。
リリアンヌの従姉妹であるアネットは自分の義理の姉となるはずだったリリアンヌの突然の婚約に物凄く驚いてしまったようで唖然としていた。
なんだかいたたまれなくてリリアンヌは終始うつむき加減で座っていた。ラファエルはそんなリリアンヌをさも愛おしそうに見つめ、まとまりつつある縁談に割り込んでしまい申し訳ない。そちらはリリアンヌでなければならない訳では無いと、ジョニー本人からも聞いていましたし、私はリリアンヌでなければならないのだ。どうか彼女と結婚させて欲しいと頭を下げた。
流石に王族に頭を下げられるとは思っていなかった父と叔父様は青ざめた顔をして、もったいないお言葉、もちろん謹んてお受けする所存でございます。どうぞ頭をお上げください!と半泣きであった。
アネットにぎこちなく馴れ初めを聞かれたがリリアンヌはただただ真っ赤になるばかりで、結局ラファエルによってあらかじめ口裏を合わせていた馴れ初めが語られた。
媚薬を盛られた殿下に運悪くぶつかって、気づけば組み敷かれ媚薬が抜けきるまで避妊して頂けないまま抱き潰されたので大急ぎで結婚する事になったの。などと本当の事は言えず。
ラファエルに見初められ、リリアンヌもラファエルに惹かれ、婚前交渉をしてしまったので万が一を考え、急ぎ籍を入れる事になったと言う流れになっている。
父は婚前交渉の下りで憤慨したが、「あら、貴方もそうだったではありませんか」と言う母の爆撃にぐうの音も出ない様子で項垂れてしまった。
もちろん婚前交渉の下りは叔父とアネットが帰った後に両親にのみ話した。
そしてリリアンヌは未だに本当に自分が雲の上の存在であった王弟であるラファエル様に、嫁ぐのかと脳が理解する事を拒む様にこの事態についていけていなかった。
しかし、ラファエルに触られると感じてしまい身体がおかしくなるのでは無いかと心配になる程に快感に溺れてしまう。
初めてのあの日だってラファエルに触られ驚き、多少の抵抗はしたが早々に快感に溺れて行為を受け入れていた気がする。
ラファエル様に口付けをされると脳が痺れた様に身体が熱くなり、何をされても気持ちいいと感じてしまう。
私はもしかしなくても…淫乱なのでは?
リリアンヌの最近の悩みは自分が淫乱だったらどうしたら良いのだろう。と言うことだった。
☆
リリアンヌが意識を手放し、くったりと執務室のソファに突っ伏した。
「リリー?………すまない、またやりすぎてしまったな」
ラファエルは清浄の魔法でリリアンヌの身を清めて抱き上げると扉に向かって行く。
「開けてくれ」
「…ラファエル様、またリリアンヌ嬢を抱き潰したんですか?昨日こちらに着いてたった一日で三度目ですよ!抱き潰すの。キャシーにまた僕が八つ当たりされるじゃないですか」
ため息をつく乳兄弟のティムをじろりと見下ろし「相変わらず尻に敷かれているな」と哀れみの目で言った。
「…仕方ないじゃないですか!キャシーはリリアンヌ嬢を見た瞬間に気に入ってしまいまして。
まぁ、こんなに可愛かったら無理もないんですが。それに、キャシーだけでは無いですよ?屋敷の使用人でリリアンヌ嬢を見かけた者達は軒並みリリアンヌ嬢を賛辞しだすのですから。この分ではそのうち舞踏会でリリアンヌ様の美しさに気づいた者達がどんどんと信者になられるのではないですか?」
「…そんな事はわかっている」
全く持って嬉しくない情報だ。ラファエルはくぐもった唸り声をあげた。
リリアンヌは女官服の中でもなぜかダボダボな、しかも着古した服ばかりを着ていた。しかも引っ詰めた髪型に緑色の眼鏡を付けて。今ならそれがなぜなのかわかる。
しかし、初めてリリアンヌを見かけた時からずっと不思議に思っていたのだ。
そして調べてわかった、女官服の方はリリアンヌを目の敵にしていた女、アガサ・アロイージ侯爵令嬢によって嫌がらせを受けていたのだ。
アガサは自身や、取り巻き達の着古した女官服をリリアンヌに下げ渡していた。
リリアンヌは平均身長よりもだいぶ小柄で華奢な身体をしている。対して、アガサやアガサの取り巻きは皆大柄な体型が多い。そんなアガサ達のお下がりなのだ。それはブカブカでせっかくのリリアンヌの華奢だがしっかりと主張する二つの鞠も細く艶かしい腰も魅力半減だ。
そして、そんなリリアンヌに嫌がらせをしていたアガサ、彼女こそがラファエルに媚薬を盛った犯人だ。
アガサはラファエルに群がる令嬢の中で一番タチの悪い令嬢で、最近では他の令嬢達を非道な手段で蹴落とし、牽制し、遂には強硬手段でラファエルに魔女の祝福を受けた媚薬を使ってきたのだ。もちろん、媚薬も毒に分類される。
もし王族が妊娠している妻を媚薬によって抱き潰した場合、高確率で流産するだろう。
後継者争いが勃発した数百年前に実際に起こった悲劇により、王宮内や王族やその婚約者、伴侶に対しての媚薬の扱いには割とめんどくさい制限がかかっていた。
更にアガサは媚薬の効きにくいラファエルにも効果が現れる様にと魔女の祝福をかけている。
流石にアガサが侯爵令嬢であっても庇う事は出来ず、早々に脱獄不可能とされる離島にある修道院と言う名の監獄にて生涯神に仕えることとなった。
今回の件は、ある男によってリリアンヌに執拗な嫌がらせを続けていたアガサを陥れる為に仕組まれた罠であったが、その事実は永遠にリリアンヌの耳に入ることは無かった。
当然リリアンヌは無職になりラファエルの婚約者というラファエルの庇護下に置かれる事となった。
まぁ、リリアンヌの実家は伯爵家とは言え私兵もいないし、リリアンヌの身の安全の為の処置だろう。
そして事件は国王陛下の耳に入り首謀者の処分が早々に行われた。
その際、リリアンヌの純潔を避妊すらせず奪ってしまった事を知ると婚姻は急いだ方が良いだろうと言う事になりラファエルが予定より早く臣に下る事が決まり、急遽皇太后の持つ爵位の中から公爵位であるジュリエッティ公爵の位と領地が讓渡された。
☆
ジュリエッティ公爵となったラファエルの治める領地の屋敷。ラファエルとリリアンヌはまずはそちらに向かう事になった。
王都に近く港町を含む領地はとても賑やかで、リリアンヌは馬車の中から少しばかりはしゃいで物珍しい店が並ぶ通りを眺めていた。
着いたのは王都から馬車で2時間程の隣り街。街を見下ろすなだらかな丘の上に建つお屋敷は、一般の屋敷に比べると巨大な、まるで小国の城の様な美しい白亜の芸術的建造物だった。
そのお屋敷の一室で翌日から早々にリリアンヌは途方に暮れていた。
媚薬の後遺症がラファエルに現れたのだ。
「リリー、君の中は凄く気持ちいい」
「…ぅ、ぁぁ、んん」
「ほら、そんな物で顔を隠さないで」
そうは言っても今は真昼間だ。
使用人達は忙しなく動き回りリリーが嫁ぐ事はもちろん、新たな領主となるラファエルの為に屋敷の改装や家具の新調にてんてこ舞いになっているようだ。
それなのに、リリーは着いた翌日からこんなあられもない姿でラファエルに抱かれている。
ソファでお尻を高く上げたリリアンヌはラファエルに後ろから突き上げられてはしたなく喘ぐ口を実家から持ってきた巨大なクマのテディベアで塞ぎ凌いでいるのだ。
現在リリアンヌはラファエルの婚約者となり、結婚までの間に高位貴族の妻として恥ずかしくないマナーや知識を詰め込む為花嫁修業の名目でラファエルの屋敷に住むことになった。
ラファエルが王都に戻る場合はリリアンヌも王都にある屋敷に着いていく予定だ。
だと言うのに、ラファエルは朝も昼も夜も関係無しに媚薬の効果がぶり返しリリアンヌを襲うのだ。
「ゃ、ラファエル様」
リリアンヌは取り上げられた巨大なテディベアに手を伸ばす。しかしすぐにラファエルによって突き上げられ快感に仰け反った。
「あぁっ…あっ…んっ…っ…ふっ…んんっ!」
あられもない声を上げまいと奥歯を噛み締める。
先程廊下を足早に通り過ぎる音がしたのに、結局喘ぎ声が漏れてしまった。
誰かに聞かれてしまったのではと真っ赤になったリリーをラファエルはニヤリと笑って見ている。
「リリー、気持ちいい時はちゃんと声を出すんだよ」
リリアンヌは更に顔を赤くして首を振る。
「ラファエル様こんな、やっ、あっ…あぁっ」
リリアンヌは自分が何を言うつもりだったのかもあやふやになった思考でやっぱり内心首を傾げずにはいられない。
なぜこんな事態になってしまったのだろう。
来月には従兄弟のジョニーと婚約する予定だったリリアンヌがいきなり王弟であるラファエルと早急に結婚したいとの話に、父はもちろん仰天した。
ラファエルが直々にリリアンヌと父の元に赴き、改めて婚約期間の短さの謝罪と今後の跡取り問題を含む婚姻の話し合いをした。母は舞い上がってリリアンヌに良くやったとばかりにサムズアップする程に興奮していた。
まぁ、母も従兄弟の自惚れ屋ジョニーとの話に難色を示していたので心配事が消えて、棚からぼたもち状態だった為舞い上がってしまったのだろう。
リリアンヌとしても、ジョニーの事が大嫌いだった為、逆にラファエル様に襲われた事は良かったのでは?と最近は思い始めていた。
ジョニーはリリアンヌが自分に惚れ込んでいるから仕方なく結婚するのだと周りに吹聴していた。
それを知ったのは友人のクリスティナが夜会で聞いたのだけど、本当にアレに惚れてしまったのかと事実確認をする為に驚愕の表情で乗り込んで来たからだ。
たまたま女官の仕事が数日お休みになり両親にもたまには戻って来いと言われ丁度その日は伯爵家の領地にある屋敷に戻っていた。
クリスティナはアネットと仲が悪く、アネットと出くわしてしまう確率の高い我が家には滅多に現れない。
「そんな訳ない!あんな自惚れジョニーなんて好きなわけないじゃない」と言うと安心した様に納得した。
突然の訪問などクリスティナ的にもやりたくないことだったに違いなく。幸いアネットはエドアルドとデートに忙しくあの日以来我が家にあまり来なくなっていた。
しかし、ラファエルが訪れた日はどこから聞きつけたのかいきなり現れた。
リリアンヌの従姉妹であるアネットは自分の義理の姉となるはずだったリリアンヌの突然の婚約に物凄く驚いてしまったようで唖然としていた。
なんだかいたたまれなくてリリアンヌは終始うつむき加減で座っていた。ラファエルはそんなリリアンヌをさも愛おしそうに見つめ、まとまりつつある縁談に割り込んでしまい申し訳ない。そちらはリリアンヌでなければならない訳では無いと、ジョニー本人からも聞いていましたし、私はリリアンヌでなければならないのだ。どうか彼女と結婚させて欲しいと頭を下げた。
流石に王族に頭を下げられるとは思っていなかった父と叔父様は青ざめた顔をして、もったいないお言葉、もちろん謹んてお受けする所存でございます。どうぞ頭をお上げください!と半泣きであった。
アネットにぎこちなく馴れ初めを聞かれたがリリアンヌはただただ真っ赤になるばかりで、結局ラファエルによってあらかじめ口裏を合わせていた馴れ初めが語られた。
媚薬を盛られた殿下に運悪くぶつかって、気づけば組み敷かれ媚薬が抜けきるまで避妊して頂けないまま抱き潰されたので大急ぎで結婚する事になったの。などと本当の事は言えず。
ラファエルに見初められ、リリアンヌもラファエルに惹かれ、婚前交渉をしてしまったので万が一を考え、急ぎ籍を入れる事になったと言う流れになっている。
父は婚前交渉の下りで憤慨したが、「あら、貴方もそうだったではありませんか」と言う母の爆撃にぐうの音も出ない様子で項垂れてしまった。
もちろん婚前交渉の下りは叔父とアネットが帰った後に両親にのみ話した。
そしてリリアンヌは未だに本当に自分が雲の上の存在であった王弟であるラファエル様に、嫁ぐのかと脳が理解する事を拒む様にこの事態についていけていなかった。
しかし、ラファエルに触られると感じてしまい身体がおかしくなるのでは無いかと心配になる程に快感に溺れてしまう。
初めてのあの日だってラファエルに触られ驚き、多少の抵抗はしたが早々に快感に溺れて行為を受け入れていた気がする。
ラファエル様に口付けをされると脳が痺れた様に身体が熱くなり、何をされても気持ちいいと感じてしまう。
私はもしかしなくても…淫乱なのでは?
リリアンヌの最近の悩みは自分が淫乱だったらどうしたら良いのだろう。と言うことだった。
☆
リリアンヌが意識を手放し、くったりと執務室のソファに突っ伏した。
「リリー?………すまない、またやりすぎてしまったな」
ラファエルは清浄の魔法でリリアンヌの身を清めて抱き上げると扉に向かって行く。
「開けてくれ」
「…ラファエル様、またリリアンヌ嬢を抱き潰したんですか?昨日こちらに着いてたった一日で三度目ですよ!抱き潰すの。キャシーにまた僕が八つ当たりされるじゃないですか」
ため息をつく乳兄弟のティムをじろりと見下ろし「相変わらず尻に敷かれているな」と哀れみの目で言った。
「…仕方ないじゃないですか!キャシーはリリアンヌ嬢を見た瞬間に気に入ってしまいまして。
まぁ、こんなに可愛かったら無理もないんですが。それに、キャシーだけでは無いですよ?屋敷の使用人でリリアンヌ嬢を見かけた者達は軒並みリリアンヌ嬢を賛辞しだすのですから。この分ではそのうち舞踏会でリリアンヌ様の美しさに気づいた者達がどんどんと信者になられるのではないですか?」
「…そんな事はわかっている」
全く持って嬉しくない情報だ。ラファエルはくぐもった唸り声をあげた。
リリアンヌは女官服の中でもなぜかダボダボな、しかも着古した服ばかりを着ていた。しかも引っ詰めた髪型に緑色の眼鏡を付けて。今ならそれがなぜなのかわかる。
しかし、初めてリリアンヌを見かけた時からずっと不思議に思っていたのだ。
そして調べてわかった、女官服の方はリリアンヌを目の敵にしていた女、アガサ・アロイージ侯爵令嬢によって嫌がらせを受けていたのだ。
アガサは自身や、取り巻き達の着古した女官服をリリアンヌに下げ渡していた。
リリアンヌは平均身長よりもだいぶ小柄で華奢な身体をしている。対して、アガサやアガサの取り巻きは皆大柄な体型が多い。そんなアガサ達のお下がりなのだ。それはブカブカでせっかくのリリアンヌの華奢だがしっかりと主張する二つの鞠も細く艶かしい腰も魅力半減だ。
そして、そんなリリアンヌに嫌がらせをしていたアガサ、彼女こそがラファエルに媚薬を盛った犯人だ。
アガサはラファエルに群がる令嬢の中で一番タチの悪い令嬢で、最近では他の令嬢達を非道な手段で蹴落とし、牽制し、遂には強硬手段でラファエルに魔女の祝福を受けた媚薬を使ってきたのだ。もちろん、媚薬も毒に分類される。
もし王族が妊娠している妻を媚薬によって抱き潰した場合、高確率で流産するだろう。
後継者争いが勃発した数百年前に実際に起こった悲劇により、王宮内や王族やその婚約者、伴侶に対しての媚薬の扱いには割とめんどくさい制限がかかっていた。
更にアガサは媚薬の効きにくいラファエルにも効果が現れる様にと魔女の祝福をかけている。
流石にアガサが侯爵令嬢であっても庇う事は出来ず、早々に脱獄不可能とされる離島にある修道院と言う名の監獄にて生涯神に仕えることとなった。
今回の件は、ある男によってリリアンヌに執拗な嫌がらせを続けていたアガサを陥れる為に仕組まれた罠であったが、その事実は永遠にリリアンヌの耳に入ることは無かった。
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