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第四章 深まる嫌疑と求愛者

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「……ありがとう。お二人の深い愛については、よく理解できました。では、違う質問ですが」

 絶句しておられたのも束の間で、モンタギュー侯爵は早くも切り替えられたようだった。じっと、私をご覧になる。

「トピアリーの下に、手袋とショールが埋まっていた件です。あなたの物で、間違い無いのですね?」
「ええ。ですが、昨日ドニ殿下とマルク殿下にもご説明した通り、一週間前に紛失した物ですわ。なぜ埋まっていたのか、見当も付きません」

 そこへ、ドニ殿下が口を挟まれた。

「あの中庭やトピアリーは、モニク嬢のお母上の思い出が詰まったものなのですよ。仮に彼女が殺人を犯したとして、証拠品をそんな場所へ埋めるとお思いですか?」
「お母上の?」

 モンタギュー侯爵とアルベール様が、私をご覧になる。はい、と私は頷いた。

「執事に聞いてくださっても結構ですわ」
「何より、私が証人になりましょう」

 ドニ殿下が、力強く頷かれる。さらに、アルベール様が付け加えられた。

「モンタギュー様。ここを辞めて、行方知れずになっている侍女がいることを、ご存じですか? 彼女なら、モニク嬢の所持品を持ち出せる。僭越ながら、そちらを調べられてはいかがですか」
「ほう。何という娘です?」

 モンタギュー侯爵の瞳が光る。アンバーだ、と私はお答えした。

「なぜ辞めたのです?」

 興味を持たれたのか、ドニ殿下がお尋ねになる。

「解雇したのですわ。信用できない言動をしましたもので」

 するとモンタギュー侯爵は、眉をひそめた。

「あなたは、些細なことで侍女をクビにするのですか?」

 言外に、カッとなりやすい、と指摘されている気がして、私は憤然とした。

「使用人を解雇するのは、これが初めてですわ。アンバーにはそれに足る、十分な理由がありました」
「私も、アンバーの人となりはよく知っています。むしろ、解雇するよう勧めたのは私です」

 アルベール様が、口添えしてくださる。そして彼は、侯爵をじっと見つめた。

「モンタギュー様。もう少し、いろいろな可能性をお考えになっては? バール男爵もシモーヌ夫人も、恨んでいる人間は多かった。あなただって、ご存じでしょう?」
「――確かに」

 侯爵は、渋々といった様子で頷かれた。

「モニク嬢、アルベール殿、お時間を取らせて申し訳なかった。では、これで……」

 ようやく終わりかと、ほっとしたその時だった。騎士団のメンバーと思われる一人の男性が、ノックをして応接間へ入って来た。彼は、モンタギュー侯爵の傍へ寄ると、耳元で何事か囁いた。とたんに、侯爵の顔色が変わる。彼は、再び私を見すえた。

「エメラルドのブローチをお持ちですね? 事件のあった部屋から、発見されたそうです」 
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