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第七章 新たな犠牲者
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「先日も申し上げた通りです。私が愛しているのは、アルベール様です。その思いに変わりはございませんわ」
たとえニコル嬢と関係があっても、と私は心の中で付け加えた。そもそも、私とアルベール様は、本当の恋人同士ではないのだから。彼が誰と交際しようが、私に文句を言う権利は無い。
(それでも、私はアルベール様が好き。これだけは、事実よ……)
ドニ殿下は、なおも言いつのろうとなさったが、その時重々しい声がした。
「モニク嬢、こちらにいらっしゃったのですか」
驚いて振り向けば、何とモンタギュー侯爵が近付いて来られた。お父様もご一緒である。
「事件に進展がございましたので、ご報告に伺ったのです。ドニ殿下もご一緒とは、ちょうどよかった」
侯爵とお父様は、一様に深刻な表情である。身構えつつも、私はお礼を申し上げた。
「モンタギュー様。ブローチをお返しいただき、ありがとうございました。本当に、大切なものですの」
「いえ。こちらこそ、そのような物を没収してしまい、申し訳なかった。また、あなたをお疑いしたことについても、お詫びを申し上げねばなりません」
おや、と私は思った。私の容疑は、晴れつつあるのだろうか。すると侯爵は、じっと私の目を見すえられた。
「今から、残念なことをお伝えしなければいけません……。あなたの侍女だった、アンバー・ブルムが、遺体で発見されました。サリアン伯爵領の森の中からです」
私は、息を呑んだ。
「――まさか……」
「気の毒だが、本当です。アンバーは郷里へ帰ると言っていたそうだが、関所という関所に照会しても、彼女が王都を出た形跡はありませんでした。そこでしらみつぶしに調べたところ、森の奥深くから、絞殺された遺体が発見されたのです……。さらに」
侯爵は、淡々と続けられた。
「三日前の夜、森番が、現場を去る不審な男性を目撃しています。我々は、その男を犯人とみなしています」
たとえニコル嬢と関係があっても、と私は心の中で付け加えた。そもそも、私とアルベール様は、本当の恋人同士ではないのだから。彼が誰と交際しようが、私に文句を言う権利は無い。
(それでも、私はアルベール様が好き。これだけは、事実よ……)
ドニ殿下は、なおも言いつのろうとなさったが、その時重々しい声がした。
「モニク嬢、こちらにいらっしゃったのですか」
驚いて振り向けば、何とモンタギュー侯爵が近付いて来られた。お父様もご一緒である。
「事件に進展がございましたので、ご報告に伺ったのです。ドニ殿下もご一緒とは、ちょうどよかった」
侯爵とお父様は、一様に深刻な表情である。身構えつつも、私はお礼を申し上げた。
「モンタギュー様。ブローチをお返しいただき、ありがとうございました。本当に、大切なものですの」
「いえ。こちらこそ、そのような物を没収してしまい、申し訳なかった。また、あなたをお疑いしたことについても、お詫びを申し上げねばなりません」
おや、と私は思った。私の容疑は、晴れつつあるのだろうか。すると侯爵は、じっと私の目を見すえられた。
「今から、残念なことをお伝えしなければいけません……。あなたの侍女だった、アンバー・ブルムが、遺体で発見されました。サリアン伯爵領の森の中からです」
私は、息を呑んだ。
「――まさか……」
「気の毒だが、本当です。アンバーは郷里へ帰ると言っていたそうだが、関所という関所に照会しても、彼女が王都を出た形跡はありませんでした。そこでしらみつぶしに調べたところ、森の奥深くから、絞殺された遺体が発見されたのです……。さらに」
侯爵は、淡々と続けられた。
「三日前の夜、森番が、現場を去る不審な男性を目撃しています。我々は、その男を犯人とみなしています」
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