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第八章 確かめ合えた愛は束の間で

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(確かに、そう仰ってはくれたけれど……)

 今は、その話題をしたくなかった。私は、無理やり話題を変えた。

「まあ、取りあえず今は、事件の話よ。ガストンが、妙な証言をしたらしいわね?」
「そうなのです」

 モーリスは、眉をひそめた。

「奴の証言は、真実とは思えません。誰かに、金をつかまされて嘘を吐いた可能性があります……。そういえば以前、郷里の親が重病で、治療費が必要だ、とこぼしていました」
「なるほどね」

 私は、考え込んだ。ローズの部屋を訪ねる男性らから賄賂を受け取っていたのも、そのせいだったのかもしれない。

「何とかして、真実を言わせるしかないわね……」
「私も、頑張ってみます」

 モーリスが勢い込む。

「他に、何かご協力できることはありませんか?」
「あ、じゃあ、このリストなのだけれど」

 私は、彼が用意したパーティーの出席者名簿を指した。

「この中に、バール男爵やシモーヌ夫人に恨みを持っている人間がいないか、今調べている最中なの。まだ、途中なのだけれど。手伝ってもらえると助かるわ」
「……ええ、それはもちろんですが」

 モーリスは、ちょっと苦笑した。

「正直、片っ端から、と言いたいところですけれどね。男女問わず、敵の多い方々でしたから」
「うう……。やっぱり、そうよね……」

 とはいえ、やってみないことには始まらない。適当にリストを分け合うと、私はモーリスと共に、チェックを始めた。直接面識の無い方も多く、都度私は、どういう人物か彼に尋ねた。サリアン家に仕えて長いだけに、モーリスは顔が広い。彼は、事細かに教えてくれた。

 その時だった。私は、リストに覚えのある名字を見つけた。

(――クイユ!?)

 アルベール様のお母様は、クイユ伯爵家のご長女と仰っていなかったか。私は、平静を装いながらモーリスに尋ねた。

「ねえ、モーリス。こちらのご出席者は、どういう方かしら?」
「ああ、クイユ伯爵でございますか」

 モーリスは、知った顔で頷いた。

「このご一族も、バール男爵には恨み骨髄でございましょうなあ。二十年ほど前、クイユ伯爵家は、彼に崩壊させられたのですよ」
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