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第十二章 波乱の鷹狩り

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 恐怖の沈黙が続く。それを破ったのは、ローズの甲高い声だった。

「まあ、陛下ったら。こんな若いご令嬢に、興味をお持ちですの? 孫のような年齢では、ございませんこと?」
「ローズ!!」

 私は、思わず立ち上がってローズを怒鳴りつけていた。国王陛下に向かって、何ということを申し上げるのか。第一、陛下はまだ五十歳。十八歳の孫がいらっしゃるお年ではないし……。いや、仮にそんなお年だったとしても、その発言は完全にアウトだ。周囲の貴族たちも、真っ青になっている。

「父上。ローズ嬢は、ジョークがお好きでしてね。真剣に取らないでいただけると……」
「その通りです。若く美しい女性に興味を惹かれるのは、男の性ですよ」

 マルク殿下とドニ殿下は、必死にその場を取りつくろおうとされている。私は、陛下とローズを見比べて、ただおろおろとしていた。

(どうしよう。陛下、確実に気分を害されたわよね……?)

 陛下は、しばらく沈黙されていたが、やがて静かに口を開かれた。

「そういう意味ではない。彼女によく似た女性を、昔知っていたのだ。私にとっては、実に懐かしい思い出だ」
「まあ……」

 懲りないローズが、またもや何事か発言しようとする。マルク殿下は、そんな彼女の腕を取ると、強引に立ち上がらせた。

「ローズ嬢、せっかくの良いお天気ですから、森を散策しませんか。ご案内します」
「あら、でも……」
「行きましょう」

 ローズは、マルク殿下に引きずられるようにして、連れて行かれた。ドニ殿下は、そんな彼らをチラとご覧になると、私の方を向き直られた。

「我々も、散策に出かけませんか」

 アルベール様とエミールが、パッと同時にこちらをご覧になる。殿下は、私の耳元に唇を寄せると、囁いた。

「あなたと二人きりで、話がしたいのです」
「わかりましたわ」

 私は、頷いた。こんな盛大なイベントの場で、危害を加えられることは無かろうと判断したのだ。

 ドニ殿下が私の手を取って歩き出すと、エミールが慌てたように立ち上がった。私たちを追おうというのだろう。だが国王陛下は、彼を引き留めた。

「エミリー嬢。もう少し、話がしたいのだが」
「……はい……」

 渋々といった様子で、エミールが再び座る。私は、ドニ殿下に誘導されるがまま、森の奥へと入って行った。
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