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第十三章 思いがけない王命

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 その夜、アルベール様とエミール、モンタギュー侯爵が、サリアン邸にやって来られた。私は、応接間で彼らと向かい合った。コレットにも、同席させる。

 口火を切られたのは、モンタギュー侯爵だった。

「国王陛下はドニ殿下に、シュザンヌ妃がお住まいだった離宮にて謹慎するよう命じられました。当面の間、自由行動は禁止、外出ももちろん不可とのことです」

 ですが、と侯爵は厳しい表情で続けられた。

「それはごく一時的なものです。何だかんだ言っても、陛下はドニ殿下に甘くていらっしゃる。第一、殿下ご不在では国が回りませぬ」

 確かに、お体の弱いマルク殿下に代わって、まつりごとの大部分はドニ殿下が担われているのである。

「そこで、ドニ殿下の自由が奪われているこの短い期間に、何とか彼の悪事を暴かねばなりません。そのために、アルベール殿とモニク嬢に、ご協力を賜りたいのです」

 もちろんです、と私たちは大きく頷いた。

「あの後、森の中を調べたところ、料理人を撃ったと思われる猟銃が発見されました。ですがそれは、一般的に流通しているもの。ドニ殿下と結びつける手がかりにはなりませんでした。……ですが」

 侯爵は、私とアルベール様を見つめた。

「殺された料理人の素性を洗ったところ、メルヴィク国の生まれであることがわかりました」

 おや、とアルベール様が目を見開かれる。メルヴィク国というのは、モルフォア王国の隣国である。

「ドニ殿下は、メルヴィクに留学なさっていたことがありますよね」
「その通りです」

 侯爵が、頷かれる。

「それも、料理人がまだメルヴィクにいた頃です。現時点では明確な証拠にはなりませんが、追う価値はある。現在、二人の接触の有無について調べさせています」

 そこへコレットが、おそるおそる口を挟んだ。

「でもドニ殿下は、なぜこんな目立つ場で、わざわざ殺人を企てたのかしら?」
「門番の調査結果が来ることが、わかっていたからでしょう」

 そう答えられたのは、アルベール様だった。

「マルク殿下は、こう仰っていましたよね。調査結果が判明次第、鷹狩りの途中でも報告するよう命じていた、と。調査に当たったのは、殿下の忠臣。買収することは困難と判断したのでしょう。ならば、報告を受けるマルク殿下ご本人を消してしまおう、という考えではないでしょうか。元々、先頭に立って事件の捜査をなさっているのは、マルク殿下だ。彼さえいなくなれば、捜査もうやむやになるという魂胆では? 第一、王太子殿下が殺害されれば、皆の関心はそちらに向くでしょう」
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