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第十四章 真犯人への罠

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 翌朝、王宮から迎えの馬車が来た。うやうやしくエスコートされて乗り込む私の姿は、名誉ある王太子妃に選ばれた女性には、とても見えなかったことだろう。一睡もできなかった私の瞳は真っ赤に充血し、顔は憔悴しきっていた。

 だがそれは、単に不本意な婚約だから、ではない。私は一晩中、あのロケットのことを考えていたのだ。

 私の手袋とショールがトピアリーの下から発見された日、ドニ殿下は確かにあのロケットをお持ちだった。だが、次に私がロケットについて言及した際、彼は持っていないと仰った。

 殺人事件以降、ドニ殿下はサリアン邸を度々訪れては、トピアリーを鑑賞された、と私は思い出していた。きっと、ロケットを捜しておられたのだろう。……ではなぜ、正直にそう仰らなかったのか。一言、私なりお父様なりに尋ねてくだされば、すぐにお捜し申し上げたのに。

(それは、にロケットを落とされた可能性があったからだわ)

 そしてその場所とは、決して他言できないような所に違いない。私は、そのことをほぼ確信していた。だから、アルベール様にご相談したかったのに。私に付けられた監視は、一晩中続いたのだ。抜け出す隙は無かった。おまけに、頼りになるコレットやモーリスも、もういない。こうして私は、とうとう王宮行きの朝を迎えたのだった。

(どうにか、アルベール様とお会いする機会を作って、早くご報告しなければ。どうしても彼に会えないなら、モンタギュー侯爵でもいい。このロケットはきっと、ドニ殿下を追い詰める切り札になるわ……)

 私の頭の中は、マルク殿下との婚約を解消することよりも、そのことでいっぱいだった。
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