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番外編:その時、アルベールは~②

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 医師が去ってしばらくすると、控えめなノックの音がした。モニクだろう。アルベールは、弾んだ声で返事をした。

「入って」

 モニクのことだ、さぞや責任を感じていることだろう。一月で治る、ということを早く伝えたくて、そう言ったのだが……。入って来たモニクは、パッと顔を伏せた。

(……あ)

 安堵と喜びのあまり、自分がまだ半裸のままだったことを、すっかり忘れていた。とはいえ、ここで謝れば、余計気まずい空気になりそうだ。アルベールは、モニクの動揺に気付いていないふりをして、明るく話しかけた。

「一月で治るらしい」

 にっこりと微笑みかければ、モニクは頷いた。

「――私も、お医者様にお聞きしました。よかったですわね」

 懸命に平静を装っているが、顔は真っ赤だ。しかもそれでいて、着替えを手伝うと言い出した。断っても角が立つ気がして、アルベールは彼女の言葉に甘えることにした。

 負傷した右肩に障らないよう、モニクは慎重に服を着せかけてくれる。アルベールは、そんな彼女を盗み見た。手は震え、顔は強張っている。男の肌を見たことが無いのだろうか。

(やっぱり、止そう)

 アルベールは、先ほどまで脳裏に渦巻いていた黒い計画を断念した。予想はしていたが、この反応は明らかに生娘のそれだ。利き腕の使えない今、不自由な状態で行為に挑んで、うっかり傷つけでもしたらどうする。モニクのことは、精一杯大切にしたいのに……。

 着替えが終わると、アルベールはあえてすっとぼけて見せた。

「そこまで緊張しなくても。これくらいの傷は、どうってことありませんよ。慣れている」
「え、ええ……」

 自分の緊張の理由が、バレなかったと思ったらしい。モニクは、露骨に安堵の表情を浮かべた。そこへ、タイミング良くメイドが食事を持って来る。アルベールは思った。

(その代わり。こちらで、楽しませてもらおうか)
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