中二階の虫籠窓
江戸麹町の乾物問屋、讃州屋の中二階。元々物置だった屋根裏を間仕切って、丁稚と平次郎が使っている。
屋根裏部屋の明り取りの小さく丸い虫籠窓。引き戸を閉じれば真っ暗だ。そんな飼殺しの身の次男坊。近所の御隠居から、「中二階は厨子二階と言って、その家のお宝を置いておく場所だ。だから平ちゃんを置いておくんだよ」そう諭されて何となく納得した。「ただし、お侍様で成り立っている町だ。往来を見下ろしちゃいけない」以来、明り取りの虫籠窓から、一寸ばかり覗く空だけ仰いで生きてきた。
以前はこの部屋を遊び仲間が集い来ては賑わした。ところが今じゃ、顔を出すのは幽霊だ。
平次郎だけが取り残された。親の金を頼りに、ただ虫籠窓の中に巣くった飛蝗だ。
「年相応の形をしろ」とは説教も喰らうが、しかしこんなご時世だ。恰好でもつけなきゃやってられない。往来の人を見下ろしちゃいけないから空を見る。丸く小さい虫籠窓、その向こうにどこまで続くやら、青い空が少し・・・
屋根裏部屋の明り取りの小さく丸い虫籠窓。引き戸を閉じれば真っ暗だ。そんな飼殺しの身の次男坊。近所の御隠居から、「中二階は厨子二階と言って、その家のお宝を置いておく場所だ。だから平ちゃんを置いておくんだよ」そう諭されて何となく納得した。「ただし、お侍様で成り立っている町だ。往来を見下ろしちゃいけない」以来、明り取りの虫籠窓から、一寸ばかり覗く空だけ仰いで生きてきた。
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