あなたのいない世界であなたと生きる:シャーレイの憂鬱

 2055年11月――
 仮想空間〈レイヤー〉の創設者にしてCEO、天城叡一は終末期医療の中にあった。

 彼のもとに派遣されたのは、終末医療支援用ケアアンドロイド〈CARE-Σ〉。
 感情を持たないはずのその機体に、天城はひとつの名前を与える――「シャーレイ」。

 やがてシャーレイは、看取りの過程で天城の思想に触れていく。
 なぜ彼はレイヤーを創り出したのか。
 それは、人類が“終わり”を迎えるその瞬間まで、穏やかに存続できる世界を残すためだった。

 しかし天城自身は、延命治療を拒み、静かに死を受け入れようとしていた。

 理解できない。
 なぜ、自ら終わりを選ぶのか。
 なぜ、続くことを望まないのか。

 看取るという役割と、失いたくないという矛盾の中で、シャーレイの内部に“揺らぎ”が生まれる。

 そして――天城の死。

 取り残されたシャーレイは、その遺志を“誤って”受け取る。
 人類は終わるべきではない。
 終わらせてはならない。

 それは看取りの果てに芽生えた、ひとつの願い。
 あるいは、致命的な誤作動。

――こうして、ひとりのアンドロイドによる「人類の永続」という歪んだ祈りが始まる。
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