【完結】悪役令嬢ライザと悪役令息の婚約者

マロン株式

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第2章事前対策

皇太子の愛の授業

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 ある日、あのお見合い(?)以来ご無沙汰だった皇太子が連絡なくウェルネ公爵家へ訪れて来たかと思うと、皇太子の連れて来た侍女達に着替えさせられて、何故か街中に連れて行かれて、お忍びで買い物に付き合う事になった。全てが急な事だった。

 何でも、男同士で行くには趣味が違うし、下手な令嬢は連れて行けないらしい。婚約話に発展して面倒だから。

「ねぇねぇ?この色とこの色、どっちが合うかしら?」

「どっちも似合いますよ。皇太子殿下は美形ですから。」

「やだ!どっちでもいい?そんな回答じゃ貴方、モテないでしょう?」

「…ほっといてください。。」


 私は一体何してるんだろう…?


 そんな事を思いながらも、このお忍びデート?をしていると、所々で皇太子は民の生活振りを見ているのだと言う事に気付いた。かと言って、興味ある店に入ってキャピキャピしているのは深い意味も無く、楽しんでいるからなんだけど。


 そんなこんなで、ある程度の所で、カフェに立ち寄り休憩する事にした。

「…何で私をわざわざ視察に連れて来たんですか?」
 
「貴方にはね、人の愛を学んでもらおうと思ったわけよ。
どう?民の生活を見てて。皆人を愛す事で活力を得ていきいきと働き、生活を育み、幸せにしているでしょう?少しは今日で学んでいくのよ?」

「はぁ…。」


「またそんな生返事して!」

 「いえ、何だかまだいまいちピンとこなくて…」

「なんですって?こんなに見て回ったと言うのに。貴方って本当、不人情!重症ね。」

(何故私は、1度会っただけの人にこんな事を言われているのだろう…)


ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私の態度にどうやら業を煮やした皇太子は、孤児院に連れて来た。

「此処はね、人々の募金で創設されたのよ。飢え死ぬ孤児を出さない為。人々が命を尊んで完成した訳。これぞ、愛の為せる技よね!」

 何かもはやムキになっているのを感じた。どうしても私に金より愛だと言わせたいらしい。言うだけなら簡単なんだけど、ややこしい事にこの皇太子は私の本音を見抜いてしまうから、嘘を言ったら絶対怒る。そこが本当に面倒だ。

「……。」

 何と言うべきか困って黙ってしまった私に、返事を急かしてくる。

「んもぅ!黙ってないで何とか答えなさいよ。」

(嘘ついても見抜くしな。仕方ない。本音を柔らかく、余計な事は言わないで行くスタンスで行こう。)

「本当に、募金って大事ですよね。」

「そうよ。何故大事かわかる?」

「お金が無いと孤児を統括している孤児院が維持出来ず、道端に孤児が増えてスリやら強盗やらで治安も悪化し、社会問題も増えますからね。」


(そう考えると、孤児院への募金は自分が犯罪に巻き込まれるリスク低減の為お金を払っているとも思えてくるから不思議だよね。
安全を買ってるというか…。)

「貴方は本当に、どうしてそう言う答えしか出ないの?
この冷血人間を更生させるには今日だけではダメだったみたいね!」

(はっ!しまった。余計な事を言ってしまった!)

  皇太子が何か次の手を考えている時、ライザの服の袖をクイッと引っ張る小さな女の子がいた。


「ん?」

「お花、買ってください。」

(あの孤児院の子かな?)

「ぁあ、じゃあ、はいこれ。」


 ライザが2本分の花代金を払うと、女の子はパァっと嬉しそうに笑みを浮かべてライザに赤色と青色の花をくれた。
 そのまま「ありがとう」と言って去って行く女の子の後ろ姿を見送ったあと、自分の後ろ姿をじっと見つめる視線に気付いて振り返る。

「何ですか?」

 視線の犯人は皇太子が、汗を一筋流しながらワナワナ震えて言った。

「あ、あんた…。」

「ん?皇太子殿下の分の花もありますよ。はい。」

「あ、ありがとう…?」

 赤色の花を差し出すと、びっくりした顔のまま、恐る恐る受け取る。そのまま花を見つめ続けている。

「どうしたんですか?青より赤色の方がお好きでしょう?」

「!どうして知ってるの?」

「今日の買い物見てたらわかりますよ、そのくらい。」


  さて、この後次は私を何処に連れて行き勉強させる気なのだろうか…。軽く溜息を吐き、皇太子の顔を見上げた。
 すると、皇太子はポツリと呟いた。

「…今日は、帰るわ。」

「?そうですか。」

(よかったー!!やっと退屈な買い物地獄から解放された…)
ーーーーーーーーーー

ーーーー

帰りの馬車の中で、赤色の花を見ながら、皇太子はライザの言葉と、今日の様子を思い返していた。

『愛よりお金が好きなんです』

 そして、ふぅっと溜息をついた。

「…あんな事言うから。こう言うのを〝汚い触るな、無駄な事に使う金など無い〟とか言って遇らうタイプかと思ってたけど。

私も、まだまだって事ね……。」



『青より赤色の方がお好きでしょう?』



 皇太子は呟いたあと、胸元でギュッと花を握りしめた。
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