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第17話:後悔しても仕方がない~エヴァン視点~
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毎日後悔する日々を送る事1週間。相変わらず令息たちが、ルーナを囲んでいる。ただルーナは令息に囲まれるのが苦手な様で、エマ嬢の助けを借り、上手く回避している様だ。
その日もこっそりとルーナを見つめた後、僕も家路に着いた。相変わらず食欲はなく、今日も部屋で過ごす。後悔しても仕方がない、そろそろ前を向かないと、そう思ってもやっぱり後悔しかない。
ついため息が出てしまう。どうして僕は、あんな女の話を信じたのだろう。どうして僕は、ルーナを信じる事が出来なかったのだろう。どうして僕は、最愛の人を手放してしまったのだろう。
僕は机の引き出しの中から、あるものをとりだした。僕が14歳の誕生日の時にルーナがくれた時計だ。
“エヴァン様とずっと一緒に時を刻むことが出来ますように”少し恥ずかしそうに、そう伝えてくれたルーナ。この時は確かに幸せだったのに…どうしてこんな事になってしまったのだろう。
その時だった。父上が僕を訪ねて来たのだ。
「エヴァン、今日も食事をとらないつもりかい?君が何かに悩んでいる事は薄々気が付いていた。1年前から、急にルーナ嬢に冷たくなったことも…なあ、エヴァン。君は何をそんなに苦しんでいるのだい?一体何があったのか、私に話して欲しい」
父上が真っすぐ僕に向かってそう話した。
「父上…僕が愚かだったのです…ナタリー嬢の“クラーク殿下とルーナが愛し合っている”という嘘の言葉を信じ、ルーナと婚約破棄をしたのですから…」
僕はこの1年の出来事を、父上に話した。気が付くと、涙が溢れていた。父上は僕の愚かさを嘆くかもしれない。もしかしたら、怒られるかもしれない。それでも僕は、もう自分だけでこの気持ちを消化できるほど、心にゆとりがなかった。
泣きながら話す僕の背中を、優しくさする父上。
「そうか…そうだったのだな。それにしてもナタリー嬢には困ったものだね。それでも事実確認も行わず、一方的に彼女の意見を鵜呑みにしたエヴァンもよくなかったね。それにどうしてすぐに私に相談しなかったのだい?そうすれば、こんな事にはならなかったのに…と言っても、もう遅いか。これに懲りて、これからはどんな時でも広い視野を持つことを覚えただろう。このことは一応、兄上には報告しておくよ」
今更国王に報告されたところで、どうしようもない。僕はルーナを失ったのだから…
「それで、エヴァンはこれからどうしたいんだい?」
「僕は…出来る事ならルーナに謝りたいです。僕のせいで、傷つけてしまったので。そのうえで、もしルーナが許してくれるなら…」
「婚約を結び直したいという事だね。ただ…アルフィーノ侯爵はかなりお怒りの様だからね。“慰謝料はいらないから、もう二度と娘には関わらないで下さい”と言われているんだ。だから、厳しいかもしれないね…」
アルフィーノ侯爵は、家族思いで有名な人だ。きっと僕の事を絶対に許さないだろう。それでも僕は…
「父上、侯爵の言う通り、ルーナにできる唯一の償いは彼女に関わらない事なのでしょう。でも僕は、どうしてもルーナを諦められないのです。ですから、僕は明日から侯爵の元に通おうと思います。許してもらえる様に」
このまま何もしないなんて、やっぱり嫌だ。だって僕は、やっぱりルーナが大好きだから。どんなに罵声を飛ばされても、それでも僕は、侯爵に許しを乞わないといけないんだ。
「エヴァンの気持ちはわかったよ。それなら、私も一緒に行こう」
「いいえ、僕1人で行きます。これ以上、父上には迷惑を掛けられません。それにこれは、僕の問題ですので」
僕1人で行かないと、意味がないと思ったのだ。
「わかったよ。エヴァン、しっかり自分の気持ちを伝えれば、きっと侯爵も分かってくれるよ」
そう言ってほほ笑んだ父上。
まずは侯爵にしっかり謝らないと。
翌日、今日も朝から貴族学院へ向かう。本当は朝一で謝りに行きたかったのだが、学院を休むわけにはいかない。仕方なく学院に向かった。
教室に着くと、楽しそうに話しをしているルーナとエマ嬢の姿が目に入った。それと同時に、ある視線が気になった。そう、ナタリー嬢がルーナに送る鋭い視線だ。まるで親の仇を見る様な瞳で、ルーナを睨んでいる。あの女の事だ、ルーナをそのままにしておくとも思えない。
もしかしたら、今後ルーナに直接危害を加えるかもしれない。そう思ったら、なんだか無性に不安に思えてきた。きっと僕と婚約破棄をして悲しみに打ちひしがれるルーナを見る事を楽しみにしていたのだろう。
でも現実は違った。僕と婚約破棄をしたことで、ルーナはさらに脚光を浴びる様になった。それがきっと気に入らないのだろう。そういえばナタリー嬢、ハドソン殿下がルーナの事を好きだと言っていたな。
とにかく、彼女には注意しないと。それが今の僕に出来る、唯一の事だろう。
再びルーナの方を見ると、楽しそうにエマ嬢と話しをしている。やっぱりルーナは可愛いな…あの笑顔、ずっと僕のものだったのに…
そう思うと、胸が締め付けられる。ふとハドソン殿下の方を見ると、確かにルーナの方を見つめていた。それも切なそうに…
でも、その視線に違和感を感じる。何だろう、この感じは…
その日はナタリー嬢がルーナに送る鋭い視線が気になってたまらなかった。それと同時に、あの女の魔の手から、今度こそルーナを守ろう、そう決意した。
その日もこっそりとルーナを見つめた後、僕も家路に着いた。相変わらず食欲はなく、今日も部屋で過ごす。後悔しても仕方がない、そろそろ前を向かないと、そう思ってもやっぱり後悔しかない。
ついため息が出てしまう。どうして僕は、あんな女の話を信じたのだろう。どうして僕は、ルーナを信じる事が出来なかったのだろう。どうして僕は、最愛の人を手放してしまったのだろう。
僕は机の引き出しの中から、あるものをとりだした。僕が14歳の誕生日の時にルーナがくれた時計だ。
“エヴァン様とずっと一緒に時を刻むことが出来ますように”少し恥ずかしそうに、そう伝えてくれたルーナ。この時は確かに幸せだったのに…どうしてこんな事になってしまったのだろう。
その時だった。父上が僕を訪ねて来たのだ。
「エヴァン、今日も食事をとらないつもりかい?君が何かに悩んでいる事は薄々気が付いていた。1年前から、急にルーナ嬢に冷たくなったことも…なあ、エヴァン。君は何をそんなに苦しんでいるのだい?一体何があったのか、私に話して欲しい」
父上が真っすぐ僕に向かってそう話した。
「父上…僕が愚かだったのです…ナタリー嬢の“クラーク殿下とルーナが愛し合っている”という嘘の言葉を信じ、ルーナと婚約破棄をしたのですから…」
僕はこの1年の出来事を、父上に話した。気が付くと、涙が溢れていた。父上は僕の愚かさを嘆くかもしれない。もしかしたら、怒られるかもしれない。それでも僕は、もう自分だけでこの気持ちを消化できるほど、心にゆとりがなかった。
泣きながら話す僕の背中を、優しくさする父上。
「そうか…そうだったのだな。それにしてもナタリー嬢には困ったものだね。それでも事実確認も行わず、一方的に彼女の意見を鵜呑みにしたエヴァンもよくなかったね。それにどうしてすぐに私に相談しなかったのだい?そうすれば、こんな事にはならなかったのに…と言っても、もう遅いか。これに懲りて、これからはどんな時でも広い視野を持つことを覚えただろう。このことは一応、兄上には報告しておくよ」
今更国王に報告されたところで、どうしようもない。僕はルーナを失ったのだから…
「それで、エヴァンはこれからどうしたいんだい?」
「僕は…出来る事ならルーナに謝りたいです。僕のせいで、傷つけてしまったので。そのうえで、もしルーナが許してくれるなら…」
「婚約を結び直したいという事だね。ただ…アルフィーノ侯爵はかなりお怒りの様だからね。“慰謝料はいらないから、もう二度と娘には関わらないで下さい”と言われているんだ。だから、厳しいかもしれないね…」
アルフィーノ侯爵は、家族思いで有名な人だ。きっと僕の事を絶対に許さないだろう。それでも僕は…
「父上、侯爵の言う通り、ルーナにできる唯一の償いは彼女に関わらない事なのでしょう。でも僕は、どうしてもルーナを諦められないのです。ですから、僕は明日から侯爵の元に通おうと思います。許してもらえる様に」
このまま何もしないなんて、やっぱり嫌だ。だって僕は、やっぱりルーナが大好きだから。どんなに罵声を飛ばされても、それでも僕は、侯爵に許しを乞わないといけないんだ。
「エヴァンの気持ちはわかったよ。それなら、私も一緒に行こう」
「いいえ、僕1人で行きます。これ以上、父上には迷惑を掛けられません。それにこれは、僕の問題ですので」
僕1人で行かないと、意味がないと思ったのだ。
「わかったよ。エヴァン、しっかり自分の気持ちを伝えれば、きっと侯爵も分かってくれるよ」
そう言ってほほ笑んだ父上。
まずは侯爵にしっかり謝らないと。
翌日、今日も朝から貴族学院へ向かう。本当は朝一で謝りに行きたかったのだが、学院を休むわけにはいかない。仕方なく学院に向かった。
教室に着くと、楽しそうに話しをしているルーナとエマ嬢の姿が目に入った。それと同時に、ある視線が気になった。そう、ナタリー嬢がルーナに送る鋭い視線だ。まるで親の仇を見る様な瞳で、ルーナを睨んでいる。あの女の事だ、ルーナをそのままにしておくとも思えない。
もしかしたら、今後ルーナに直接危害を加えるかもしれない。そう思ったら、なんだか無性に不安に思えてきた。きっと僕と婚約破棄をして悲しみに打ちひしがれるルーナを見る事を楽しみにしていたのだろう。
でも現実は違った。僕と婚約破棄をしたことで、ルーナはさらに脚光を浴びる様になった。それがきっと気に入らないのだろう。そういえばナタリー嬢、ハドソン殿下がルーナの事を好きだと言っていたな。
とにかく、彼女には注意しないと。それが今の僕に出来る、唯一の事だろう。
再びルーナの方を見ると、楽しそうにエマ嬢と話しをしている。やっぱりルーナは可愛いな…あの笑顔、ずっと僕のものだったのに…
そう思うと、胸が締め付けられる。ふとハドソン殿下の方を見ると、確かにルーナの方を見つめていた。それも切なそうに…
でも、その視線に違和感を感じる。何だろう、この感じは…
その日はナタリー嬢がルーナに送る鋭い視線が気になってたまらなかった。それと同時に、あの女の魔の手から、今度こそルーナを守ろう、そう決意した。
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