菫の香りをひた隠し
たとえば、お爺様のお若い頃ではまず考えられなかった、すみれの香水も今となっては物珍しいものではなくなった。お母様は「こんな高級品を持っているというだけで誇らしかったのに」とおっしゃるけれど、私のように平素から身にまとっている者は少ない。服装だってそうだ。一昔前までは手の届かなかった着物なんかも、めかしこむと言えば洋装と言われて久しい。自分の恋心を自覚すると、はたして自分は過去を愛おしんでいるのか、未来へ歩みを進めようとしているのか分からなくなる時がある。
すみれの爽やかな甘みのある香りに捕らわれた私は、一向に思いきれない気持ちのまま、想い人と向き合っていた。
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