1 / 11
プロローグ
しおりを挟む
小学生の頃に、声のよさだけで演劇の主役に決まり大惨事になってしまった。
それは僕――裏部(うらべ)兼斗(けんと)が事故で命を落とした際の走馬燈にして、それほどまでに記憶に残り続けている出来事だ。
お面をつける劇なのに、本番に舞台で注目されると何もできなくなってしまう。
クラスメイトが代わりとなって劇は無事に終わるも、その後に僕は非難されることとなっていた。
それによるトラウマで演劇のことばかり考え、払拭したいから中学では演劇部に入り裏方を務める。
自分では無理な主役のため行動できることが嬉しかったけど、高校で演劇部に入った翌日に事故が起きてしまった。
交通事故で運が悪かったのだと思うけど、僕には未練がある。
自分のトラウマになった劇よりも、凄いと思える劇の裏方ができなかった。
――もし第二の人生があるのなら、今度こそ最高の裏方になりたい。
最高の主役を見つけ出し、問題が起これば即座に助けに行けるような存在を目指そう。
無意味な決意なのはわかっているけど、最期だからこそ願う。
その瞬間に、何故か僕の頭の中に女性の声が聞こえた。
『私は女神アムリア――貴方凄くいいです! 異世界に転生しませんか!!』
なにを言ってるんだ、この人は?
今まで関わった劇に女神は出なかったから、最期にしては場違いな存在だ。
僕の目の前には、銀色の髪が長く美しい女性がいる。
親指を突き出しているけど、なにがそんなに嬉しいのだろうか。
『もう貴方は魂だけになっています! 貴方の未練と女神の力でスキルを作り出し転生できる……これはもう運命でしょう!!』
やけにテンションの高い女神アムリアは、異世界転生について話してくれた。
アムリアが管理している異世界は大変なようで、最悪の事態を避けるため別世界で亡くなった人を転生させようとしたらしい。
転生に必要な本来産まれない存在が発生するタイミングとなり、転生に使えて女神の力を最大限に発揮できる魂が僕だけのようだ。
『この機会を逃せば、次の機会がくるよりも先に私の管理している世界が滅ぶかもしれません――どうか【裏方スキル】を持ち転生してください!』
僕は注目されたくないけど……裏方スキル?
『はい。自身は目立たず、仲間を支える際にとてつもない力を発揮するスキルになるようですけど……詳しいことは、ケント様が使っていかないとわかりません!』
最高の裏方になりたいという僕の未練に、女神の力が応えたものだろうか?
2度目の人生なのだから夢は大きく、最強勇者の裏方とかがよさそうだ。
僕は考えているだけなのに、女神アムリアには聞こえているのか嬉しそうな声が聞こえる。
『やる気になってくれましたか! 強力な存在はいるだけで効果がありますから、転生した後は自由に生きてください!』
世界を救ったりはしなくていいのか。
どんな異世界に行くのか説明せず要点を話した辺り、女神と話せる時間は残り僅かな気がする。
『その通りです! 最後にこの【裏方スキル】は強力ですけど、私とケント様を除く【4人まで】しか知られてはいけないという欠点があります。それ以上の人に知られるとスキルが消えるので気をつけてください!』
僕の未練を女神の力でスキルに変えたと言っていたから、その影響だろうか?
制限があるせいか強力なスキルのようで、裏方スキルを伝える仲間は重要になりそうだ。
これからのことを考えていると意識を失い、その後は男の赤子に転生することとなる。
◇◆◇
目覚めた時には産まれて数ヶ月が経ち、僕の名前は転生前と同じ「ケント」になっている。
どうやら「男の子ね。名前は何にしましょうか~」という親の問いに、覚えてないけど僕は「ケント」と声を出したようだ。
「ケントは俺と同じように、優秀な冒険者となるだろう」
「魔法を聞いてすぐに魔力を宿すなんて、神様から与えられたスキルがあるのかもしれないわね」
時々抱えられて家の外に出してくれるから、僕は異世界の小さな村に転生したと知ることができている。
両親の会話から魔力のある世界なのは把握していたけど、女神から詳しく聞けていない。
それでも今日は女神アムリアとの会話で、聞いたことのある単語を耳にした。
「すきぅ?」
「スキルよケント。考えられるようになったら眼を閉じてスキル!と強く考えると、スキル名が浮かんでくるみたい」
発言を言い返すけど、赤子だから上手く発音できない。
それでも母は喜んでくれて意味も教えてくれるからありがたく、危険だから魔法は見せてくれなかった。
母は眼を強く閉じながらやり方を説明してくれて、真似するように目を閉じれば喜んでくれる。
「選ばれし者で発現者も世界に数人いるかいないかだ。俺の子供がスキル持ちとは思えないな」
「私はケントが元気に生きてくれれば、それでいいわ」
両親の会話を聞きながら、眼を閉じた僕はスキルと強く意識してみる。
そうすると確かに文字が浮かび、僕には【裏方スキル】があった。
女神が言うには自身は目立たず、仲間を支える際にとてつもない力を発揮するスキルだったはず。
転生してからは声が聞こえなくなったけど、スキルは問題なく宿している。
現状は赤子だから自由に行動できないけど、考えることはできた。
両親は「最近になってケントの魔力が凄くなっている」と話している。
それは魔法は裏方の役に立ちそうと考えたからで……これは、裏方に必要な力が手に入るスキルなのだろうか?
女神アムリア自身も把握できない力のようだから、これから検証していけばいい。
2度目の人生は楽しく過ごし、最高の裏方になってみせよう。
「しゃいこうのうりゃかたになりましゅ」
思わず宣言してしまったけど、上手く発言できなくてよかった。
裏方スキルは、これから5人以上に知られると消滅してしまう。
秘密を守れる相手でなければすぐに消えてしまいそうだから、教える4人は選ぶ必要がありそうだ。
その後の僕は、元魔法士の母にとにかく質問していく。
産まれて3年ぐらい経つ頃には、僕は家族に知られず魔法を内緒で扱えるようになっている。
更にステータスを隠蔽する魔法を覚え、裏方魔法士の準備を着実に進めていた。
それは僕――裏部(うらべ)兼斗(けんと)が事故で命を落とした際の走馬燈にして、それほどまでに記憶に残り続けている出来事だ。
お面をつける劇なのに、本番に舞台で注目されると何もできなくなってしまう。
クラスメイトが代わりとなって劇は無事に終わるも、その後に僕は非難されることとなっていた。
それによるトラウマで演劇のことばかり考え、払拭したいから中学では演劇部に入り裏方を務める。
自分では無理な主役のため行動できることが嬉しかったけど、高校で演劇部に入った翌日に事故が起きてしまった。
交通事故で運が悪かったのだと思うけど、僕には未練がある。
自分のトラウマになった劇よりも、凄いと思える劇の裏方ができなかった。
――もし第二の人生があるのなら、今度こそ最高の裏方になりたい。
最高の主役を見つけ出し、問題が起これば即座に助けに行けるような存在を目指そう。
無意味な決意なのはわかっているけど、最期だからこそ願う。
その瞬間に、何故か僕の頭の中に女性の声が聞こえた。
『私は女神アムリア――貴方凄くいいです! 異世界に転生しませんか!!』
なにを言ってるんだ、この人は?
今まで関わった劇に女神は出なかったから、最期にしては場違いな存在だ。
僕の目の前には、銀色の髪が長く美しい女性がいる。
親指を突き出しているけど、なにがそんなに嬉しいのだろうか。
『もう貴方は魂だけになっています! 貴方の未練と女神の力でスキルを作り出し転生できる……これはもう運命でしょう!!』
やけにテンションの高い女神アムリアは、異世界転生について話してくれた。
アムリアが管理している異世界は大変なようで、最悪の事態を避けるため別世界で亡くなった人を転生させようとしたらしい。
転生に必要な本来産まれない存在が発生するタイミングとなり、転生に使えて女神の力を最大限に発揮できる魂が僕だけのようだ。
『この機会を逃せば、次の機会がくるよりも先に私の管理している世界が滅ぶかもしれません――どうか【裏方スキル】を持ち転生してください!』
僕は注目されたくないけど……裏方スキル?
『はい。自身は目立たず、仲間を支える際にとてつもない力を発揮するスキルになるようですけど……詳しいことは、ケント様が使っていかないとわかりません!』
最高の裏方になりたいという僕の未練に、女神の力が応えたものだろうか?
2度目の人生なのだから夢は大きく、最強勇者の裏方とかがよさそうだ。
僕は考えているだけなのに、女神アムリアには聞こえているのか嬉しそうな声が聞こえる。
『やる気になってくれましたか! 強力な存在はいるだけで効果がありますから、転生した後は自由に生きてください!』
世界を救ったりはしなくていいのか。
どんな異世界に行くのか説明せず要点を話した辺り、女神と話せる時間は残り僅かな気がする。
『その通りです! 最後にこの【裏方スキル】は強力ですけど、私とケント様を除く【4人まで】しか知られてはいけないという欠点があります。それ以上の人に知られるとスキルが消えるので気をつけてください!』
僕の未練を女神の力でスキルに変えたと言っていたから、その影響だろうか?
制限があるせいか強力なスキルのようで、裏方スキルを伝える仲間は重要になりそうだ。
これからのことを考えていると意識を失い、その後は男の赤子に転生することとなる。
◇◆◇
目覚めた時には産まれて数ヶ月が経ち、僕の名前は転生前と同じ「ケント」になっている。
どうやら「男の子ね。名前は何にしましょうか~」という親の問いに、覚えてないけど僕は「ケント」と声を出したようだ。
「ケントは俺と同じように、優秀な冒険者となるだろう」
「魔法を聞いてすぐに魔力を宿すなんて、神様から与えられたスキルがあるのかもしれないわね」
時々抱えられて家の外に出してくれるから、僕は異世界の小さな村に転生したと知ることができている。
両親の会話から魔力のある世界なのは把握していたけど、女神から詳しく聞けていない。
それでも今日は女神アムリアとの会話で、聞いたことのある単語を耳にした。
「すきぅ?」
「スキルよケント。考えられるようになったら眼を閉じてスキル!と強く考えると、スキル名が浮かんでくるみたい」
発言を言い返すけど、赤子だから上手く発音できない。
それでも母は喜んでくれて意味も教えてくれるからありがたく、危険だから魔法は見せてくれなかった。
母は眼を強く閉じながらやり方を説明してくれて、真似するように目を閉じれば喜んでくれる。
「選ばれし者で発現者も世界に数人いるかいないかだ。俺の子供がスキル持ちとは思えないな」
「私はケントが元気に生きてくれれば、それでいいわ」
両親の会話を聞きながら、眼を閉じた僕はスキルと強く意識してみる。
そうすると確かに文字が浮かび、僕には【裏方スキル】があった。
女神が言うには自身は目立たず、仲間を支える際にとてつもない力を発揮するスキルだったはず。
転生してからは声が聞こえなくなったけど、スキルは問題なく宿している。
現状は赤子だから自由に行動できないけど、考えることはできた。
両親は「最近になってケントの魔力が凄くなっている」と話している。
それは魔法は裏方の役に立ちそうと考えたからで……これは、裏方に必要な力が手に入るスキルなのだろうか?
女神アムリア自身も把握できない力のようだから、これから検証していけばいい。
2度目の人生は楽しく過ごし、最高の裏方になってみせよう。
「しゃいこうのうりゃかたになりましゅ」
思わず宣言してしまったけど、上手く発言できなくてよかった。
裏方スキルは、これから5人以上に知られると消滅してしまう。
秘密を守れる相手でなければすぐに消えてしまいそうだから、教える4人は選ぶ必要がありそうだ。
その後の僕は、元魔法士の母にとにかく質問していく。
産まれて3年ぐらい経つ頃には、僕は家族に知られず魔法を内緒で扱えるようになっている。
更にステータスを隠蔽する魔法を覚え、裏方魔法士の準備を着実に進めていた。
応援ありがとうございます!
48
お気に入りに追加
87
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる