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31話

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 あれから私達は、ルドロス国の刺客がやって来た場合、どう行動するべきかを話していた。

 ウォルフとズビアが森に出れば刺客が襲いかかり、捕らえようと動く。

 騎士長はズビアに対して強い殺意を持っているから、狙われるとしたらズビアだ。

「王の間の会話から僕とウォルフの存在は知られていますし、僕が狙われる確率は高い……そこを利用するべきですね」

 ズビアが刺客の対処をどうするか話してくれるけど……私はズビアとウォルフに任せることにしている。

「もし追い詰められたりしたら、すぐに森まで逃げて、森の中にさえ入ればなんとかできるわ」

「奴等もそれを警戒していそうですが……心配しなくとも、私達なら大丈夫です」

 ウォルフとズビアは自信に満ちていて、2人を狙う刺客が来るのを待ち望んでいるかのようだった。

 × × ×

 あれから数日経って――まだ刺客は来ていない。

 今までの王都から森までやって来る日数的に、そろそろ来たとしてもおかしくはなかった。

「ウォルフとズビアが森を出ましたが……大丈夫でしょうか?」

 私とハロルドは森内までなら2人を確認できるから、王の間での会話を聞いて以降警戒していた。

 ハロルドが心配しているのは、暗躍部隊の行動が想像以上だったせいね。

「大丈夫だとは思っているけど、ハロルドとしては不安なの?」

「はい……暗躍部隊の作戦を王の間で話さなかった辺り、ライオスは監視されていると推測しながら策を練っている可能性があります」

 確かに……転移魔法と遮断の結界を対処してきた方法については、ライオスは王の間での説明をしなかった。

 偶然の可能性もあるけれど……騎士隊の報告から、監視されていると警戒していてもおかしくない。

 どうして策を私に伝えているのかわからないし、ルドロス王やディオンの反応は演技とは思えなかった。

 ルドロス王やディオンには伝えているはずだから、ただの偶然なのかもしれない。

 それでもハロルドとしては警戒しておくべきだと言いたそうで、私は告げる。

「暗躍部隊が屋敷に侵入してきたのには驚いたけど、あれ以上の戦力がルドロス国に居るとは思えないから……問題ないわ」

 もしあの暗躍部隊以上の人材が居るのなら、ルドロス王やディオンが知っていないとおかしい。

 騎士隊と暗躍部隊がルドロス国の最強戦力なのは間違いなくて……それなら、どんな手を使ってきたとしても問題はない。

 ズビアとウォルフなら大丈夫だと、私は確信していた。
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