【完結】もしも、巡る季節が止まってくれたら

「自分の人生なんていらない。家族が笑ってくれるなら。そう信じていた。──でも、それは本心ではなかった。」

 渡辺未咲(わたなべ みさき)高校三年生。重度知的障害を抱える双子の姉と父との三人で、小さな海町に暮らしている。
 知能が三歳程度の姉は介助が必要であり、物心着く頃から姉中心の生活に身を置いていた。
 小学五年生で母を亡くし、仕事で忙しい父の代わりに家事と姉の介助を担う。

「自分の人生なんていらない」
 そんな思いから高校卒業後はアルバイトと姉の世話をすると決め、教師より自分の人生を生きるようにと助言を受けるも考えを改めることはなかった。


 そんな高校三年生の夏。未咲が目を離している間に、姉が行方不明になってしまう。衝動性が強い姉は交通事故や水難事故に遭う危険があり、一刻を争う事態となる。

「もう家族を失いたくない」
 張り裂けそうな思いで、姉の行方を追う。


 それをキッカケに出会ったのは高校のクラスメイトである、五十嵐健太(いがらし けんた)。無口で無愛想、たまに出る言葉が毒舌でありクラスより浮いた存在だった。
 しかし男性が苦手な姉は、健太に心を許している。
 健太の提案から、三人で小さな夏の思い出作りをすることになる。

 何も言わずに、そっと差し出される手。不器用だけど、まっすぐで、誰よりも優しい。
 気付いてくれる、誰かの存在。
 初めて「本当の自分」を認められたような気がして、未咲は少しずつ心を開いていく。

 だけど。
「未来がある彼と、誰かの為に生きているだけの私」
 その思考に囚われた未咲は、姉に差し出す手が止まる。

「彼の隣に居ると、『求められている私』では居られなくなってしまう」
 そう思った未咲は、自ら彼を遠ざけてしまう。


 やがて心の支えを失った未咲は生きる意味を見失い、姉を置き去りにしてしまう。

「流れていく時間も、巡る季節も止まらない」
 彼と眺めた夕日が沈む前に時間を止めたいと思った未咲は、海に向かって歩き出してしまう。


 幼少期より抑えてきた感情、求められている役割、諦めた自分の人生。
 誰かの為に生きてきた未咲が健太と出会ったことにより、このままの人生で良いかを悩み。健太が心を閉ざしてしまった理由を知り、誰かの為に生きるということはどうゆうことなのかを直面する。


イラストは、ACイラスト様よりお借りしています。
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