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「王様、ユリーナと御話しをしたいと思いますが…」
「…今話せる状態なのか分からぬが…ブランシェ侯爵と話せるのは今しかないだろう…待っておれ」
王様は自ら足を運びユリーナ母さんの元へ歩いて行った。
俺はユリウスの騎士服のマントを引っ張り呼ぶ事にしてユリウスは振り向きクスッと笑って居るように見えた。
「……覚悟を決めた顔をしているんだね…父様」
「…王様と大臣達との話し合いでどうなるのか分からないけど…もしかするとこのラクロス王国から追放に成るのかもしれない」
「追放?大袈裟だよ……そんな事に成ったら…」
俺はギュッと手に持っコップを握り締め考えたくも無い事を考えていた。
「クスッ……まだコップを持って居たんだね…」
ユリウスは俺と同じ目線で腰をおとし普通のコップに手を掛けていた。
「…私が戻った時またあの湧き水の場所へこのコップを持って一緒に水を飲みに行きたいね」
「さっきも同じ事を言って僕に嘘ついた癖に、嘘つく父様は嫌いだよ」
「ええっ!?ごめん、ごめん…カイトもう父様カイトに嘘は言わないから父様と約束して欲しい、一緒にこのコップで水を飲みに行くんだって」
チュッと俺の唇にキスをしてきた為俺は驚いて顔が真っ赤になり前にいるアドルフさん達に気付かれていないのか焦っていた。
「ば、な、何キ…」
俺が話の途中でユリーナ母さんを連れて来た王様が俺とユリウスの元へ近付いていた。
ユリウスはゆっくりと立ち上がりユリーナ母さんの側に来た。
パシッ!
!!
ユリーナ母さんはユリウスの頬を平手で叩き涙目に成りユリウスの胸を叩き出した。
「旦那様は何回私に叩かれ無くては成らないのですか?そんなにあの夫人が良いのですか?私がどんな思いで遅い帰りを待って居たのか分かりますか?人から旦那様が他の女性と会っていますと聞かされました私の気持ちを考えた事が有りますか?…旦那様……うぅ…」
「……ユリーナ…」
ユリーナ母さんは今まで叩いていたユリウスの胸に頭を埋め泣き崩れていた。
ユリウスは自分の胸に抱き付き泣いているユリーナ母さんの体をギュッと抱き締めていた。
久しぶりに抱き締めるユリーナ母さんにユリウスは懐かしい匂いと子供達と一緒に生活をしていたブランシェ家の暖かな日々を思い出し涙が溢れる思いだった。
自分は何故家族を捨ててしまったのか…何故女達の元へ行ったのか……何故カイトをあの場所へ置き去りにしてしまったのか……後悔と悲しみがユリウスの中で涙として流れていた。
「……済まない、ユリーナ…済まない……君を最後まで苦しめてしまった…いま頃後悔しても幸せだった家族の元へは戻れない…君は…君の幸せをいっまでも見守っているよ……子供達を頼んだよ……私の愛した妻……」
「……旦那様?……どうしたのですか?……」
ユリーナ母さんはユリウスの胸に埋めていた顔を見上げ涙を流しているユリウスを見ていた。
「…ブランシェ侯爵はそこにいるルィーズ・ホルン伯爵夫人との密会と息子のカイトの置き去りにより大臣達との話し合いの結果で処分が与えられる事だろう」
「!?……な、何故そんな事に……」
ユリーナ母さんは驚きユリウスの顔を見上げていた。
「当然の報いだよ…君に隠れて他の女性と会い、ルィーズ伯爵夫人とこんにちまで会っていたそしてルィーズ伯爵夫人に夢中に成り一緒にいたカイトを湧き水の場所に置き去りにしたんだ…罰を受けるのは当然だよ……」
「…そんな……何て事を旦那様…何を馬鹿なことをしているのですか?……シルビア様と一緒に居たいと申されたから私は…私は……別れたくも無い貴方様と別れたのですよ…何をしているのですか……ユリウス様…」
ギュッとユリウスの騎士服を握り締め苦痛の表情を見せていた。
「…大臣達との話し合いの結果でどうなるのか…この先君と子供達に会えるのかも分からない……一目…子供達に会いたかった…ショーンとエミリーとは気まずいままだったから…謝りたかった……アニーには悪い事をしたあんなに城に来る事を喜んでいたのに…ジェーンに魔法の使い方を教えてあげたかった…ルカリオともギクシャクした感じのままで…駄目な父親の姿を見せていた……せっかく今日リンとカイトに会えたのに…リンとこのまま会わず私を忘れるだろうか……カイトは……」
「もう会えない様な言い方はしないでよ父様僕との約束忘れたの?」
「ハハハそうだったね忘れる所だったよカイト」
「酷いよ父様…」
ユリウスは俺を抱っこして頬にキスをしていた。
「……王様、ユリーナにわたくしの妻に口付けを交わしても宜しいですか…」
ユリウスは夫婦として長年一緒に居てくれた妻に口付けを交わす事を王様に訪ねていた
「……良いだろう許す」
「…僕は邪魔だから降ろして父様」
「カイトに見せつけたいのだが…ユリーナはどうする?」
「子供の前で何を言って居るのですか?旦那様」
親子3人クスクスと笑いユリウスは抱っこしていた俺を降ろし、ユリウスとユリーナ母さんは御互いに見つめあい涙目に成っているユリーナ母さんにそっと指先で涙を拭い2人は唇を重ね抱き締めていた。何度も何度も唇を重ね愛し合っていた日々が思い出されていた。
口付けの激しさを見ていた王様が俺を呼び話し掛けていた。
「……カイト…ブランシェ侯爵とユリーナ殿は夫婦の時はあの様に激しい口付けを交わして居たのか?!」
「はい…毎日あんな感じでした……」
「何?毎日あんなに激しく口付けをするのか!」
王様は俺に聞いた後まだキスをしていた2人を見て俺に話してきた。
「…カイト今度私とブランシェ侯爵達の様な激しい口付けをしてみないか!?」
「ええっ?嫌です!」
俺が王様に断りを言っているなか奥の後ろで執事から支えて貰いその様子を見ていたルィーズ伯爵夫人がいた。
愛し合う様に抱き締め御互いに唇を重ね離れない2人の姿を見ていたルィーズ夫人はただ悔し顔を見せる事が精一杯だった。













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