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『…本田快斗の葬式!?』
『今この空を見て思い出していたんだ…兄ちゃんが亡くなった次の日に部屋の中に居るのが辛くて…外に出た時に今日のような良く晴れた日だった事を思い出すんだ……』
ユリウスは勇樹だった頃を思い出し仰向けに寝て見上げている青空に腕を伸ばし今にも青い空が手に届くかのように震える腕を伸ばしていた
『何で今そんな事を思い出すんだよ、今は自分の体を治す事に集中しろよ』
俺はユリウスの胸に顔を埋め心臓の鼓動が弱く聞こえてくる事が分かった…ユリウスは俺が顔を埋めている胸に今まで腕を伸ばしていた手を俺の頭にやり撫でながら話しを始めた
「……カイトとお話しをしても良いかい…」
「……何?…父様…僕とお話しをする前に早く良くなる事を考えてよ、傷口が治ったらそんな所で寝ていないで早く起きてよ!」
俺はユリウスの胸に埋めていた顔を上げユリウスに叱りつけた。
「そんな怖い顔を見せ無いでカイト…可愛い顔が台無しだよ…お腹の傷口は治したから大丈夫…と言ってあげたいけど血を流しすぎたみたいで……体を起こす事が出来ないんだよ…治癒能力のお陰で今は……こうやって話しは出来るけど…長くは持たないと思うだから今は……話しが出来る時にカイトと話しがしたいんだ」
「何でそんな弱気な事を言うの?何故駄目だと決めつけるの?そんな事を言う父様は嫌いだよ」
俺はギュッとユリウスの騎士服を掴み握り締めていた。
「嫌いに成らないでよカイト…でも今まで嫌われるような事をしてきたからね……そんな私を快斗は受け入れてくれて嬉しかったよ…最後に快斗を抱く事が出来て嬉しかった」
「……まだ僕は父様から愛して貰って居ないよ、僕が成長するまで長生きして暮れないと困るよ父様…」
俺は顔を上げユリウスの唇にキスをした。
「カイトから私にキスをしてくれたのは初めてだね……そして初めてカイトから誘われたよ……カイトの初めてを私にくれるのかい?」
「父様が良いから…」
俺は自分で何を言っているのか恥ずかしく顔を真っ赤にしてユリウスに応えた
「クスッ…顔が真っ赤だよカイト言い慣れない事を言うからだよ有難うカイト……長生きをしないといけないねせっかくカイトから誘われたからね…場所は何処が良いかな……森の巣が良いかな?人から見られ興奮するのも良いね……」
「趣味悪……」
「ハハハ…イタタタ…カイトからまた言われてしまったよ……その後は湧き水の場所に行こう…カイトが持っているそのコップで今度は一緒にお水を飲もう……」
ユリウスは俺の顔に手をやりニコッと微笑み言葉を交わした
「愛しているよカイト、私の元へ生まれて暮れて有難う…そして本田快斗と愛し合えた事が私は嬉しかったよ」
「父様…?」
ユリウスは俺の後ろ頭に手をやり唇を重ねた
ユリウスの舌が冷たく感じ俺の舌を絡ませた後丸い小さなゼリーの固まりを自分の唾液と一緒に俺の口の中に流し込ませ俺はゴクンとユリウスの唾液と丸いゼリーを飲んだ
俺に飲ませ終えたユリウスの手が俺から離れ急にユリウスは苦しみ出した
「父様!?父様?僕に何を飲ませたの?何故急に苦しみ……」
「……はぁ、はぁ……カ…カイトの……中に、私の…治癒…と魔法を…流し……込ませ…た」
「な!?」
俺は驚いたが体から暖かいモノが流れてくるのが分かり俺はユリウスの治癒能力と他の魔法を譲り受けた
「何やってんだよ馬鹿早く俺の中から治癒能力を戻せ」
俺はユリウスに口付けで能力を戻そうとした
「……これで…良い……助からない事は…分かって…た……死ぬ前に……カイトに私の魔法を……受け取って貰いたかったんだ……」
「嬉しくないこんな事…嬉しくない……」
俺はユリウスの胸に手をあてユリウスから授かった治癒能力を使った
『お前から貰ったんだこれで治らないならこんな能力いらない』
『……兄ちゃん……』
俺は3歳のカイトから大人の快斗に姿を代え全力でユリウスの体に治癒能力で治療続けた
能力を使う中で赤く染まっていたユリウスの手に着いた血が消え騎士服の腹部の滲んだ血も消えユリウスの顔も良く成ったように見えた
『……やっぱ兄ちゃんには…敵わないや……』
ユリウスは一言俺に伝えるとそっと目を閉じていた








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