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月神世一
過労死した元公務員、異世界の村役場に配属されました。 白石玲(しらいし れい)、二十三歳。 地方市役所・福祉課に勤めて二年半。生活保護受給者に灰皿を投げつけられ、クレーマーに胸ぐらを掴まれ、上司には「君が我慢すればいい」と諭され──ついに退職届を出した、その日の深夜。 引き継ぎ業務を片付けていた玲は、机に突っ伏したまま、過労死した。 目覚めた先は、女神ルチアナのコタツ部屋。 「ごめんごめん、君ね、寿命じゃないの。完全にうちのミス♡」 謝罪の代わりに押し付けられたのは、異世界転生と、九十万円の借金。 授かったスキルは、戦闘能力ゼロ・補助特化の【行政(ガバメント)】。 書類錬成、手続き加速、査定眼、そして──押した瞬間、神でも破れない絶対契約となる「公印」。 配属先は、三国の緩衝地帯にある寂れた村。 ポンコツ見習い女神・リリスを連帯保証人として連れ、異世界に降り立った玲が見つけた依頼書は、こうだった。 『ポポロ村事務官募集 給料・住居・食事完備 ただし村長は満月の日だけ少々激しいです』 「公務員時代のクレーマーよりマシでしょう」 そう呟いた玲を待っていたのは──。 人参柄のハンカチで額を拭く、小柄で愛らしい月兎族の村長。 そして、村役場に積まれた、三年分の未処理書類。 徹夜で全てを整然と片付けた、その翌朝。 村長キャルル・ムーンハートは、玲の整えた書類の山を見て、ふわりと微笑んだ。 「あなたの書類……キレイ……♡」 その瞳が、ほんのわずかに、紅く光った気がした。 ■ 書類とハンコで、世界の「制度」を書き換えていく。 買い叩かれていた村の特産品を、不当廉売是正勧告書で適正価格に。 民衆評価で能力が変動する勇者を、税務指導と再雇用で「認可勇者事業者」に。 満月の夜に暴走しかける村長を、労使契約書(健康配慮条項付き)で穏やかに就寝させる。 戦闘では誰にも勝てない。 だが、書類なら誰にも負けない。 押した判子は、神々の契約すら覆す。 「俺は、戦いません。書類で、解決します」 過労死した元公務員が、書類とハンコで異世界の村を救い、勇者を雇用し、女神に請求書を送りつける──。 新感覚・公務員ファンタジー、ここに開幕。
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