宴の翌朝

くねひと

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#5 後ろ手に縛って欲しい…

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 昨夜…………、
 熱いシャワーの後、バスタオルで体を拭き終わり、黒のビキニパンツを身に付けたちょうどそのとき、洗面所のドアを開けてジュンが入ってきたのだ。

 大柄なジュンの顔がミツルの肩越しに見える。ジュンの両手に抱えた縄束を見ると、もうそれが運命であるかのように、ミツルは何の抵抗も見せずに、静かに両手を背中に回した。そんなミツルにジュンも黙ったまま厳しく高手後手に縛りあげていく。

 緊縛はこれからの宴の前にどうしても必要なことだった。ミツルはジュンに身も心も拘束されたいのだった。
 例えば首に犬の首輪を嵌められたとしても、ミツルはおとなしく四つん這いになって、ジュンが引き縄を引くに任せて従順に後を従うだろう。
でも、両手が自由な状態でそのように隷属していたら、いざというときには、ミツルはジュンに反発するかもしれない。それがミツルには不満なのだ。

 身も心も束縛されたい。
 例え、心が一瞬抗ったとしても、肉体的な反抗はできないように………。
 そのためには、緊縛されることがミツルにとっては絶対に必要なのだった。

「さ、縛りあげたよ……」
 ジュンは後ろ手縛りの縄を胸に回る縄に連結して、更に引き絞った。
「ううっ……」
 手首をねじあげられる痛みにミツルは思わず顔を歪める。

「縄抜けしてごらんよ……」
 ジュンはクスクス笑いながら、ミツルに命じる。
 ジュンは自分の捕縛の出来ばえを確認したいのか、ミツルを縛りあげると、いつも縄抜けをするようにけしかけてくるのだ。

 ミツルは顔を真っ赤にして激しく縄を掛けられた上半身を揺すってみるが、縄目はびくともしない。むしろもがけばもがくほど、逆に縄はミツルの肌に喰い込んでくるような気さえするのだった。ミツルにしたところで簡単に縄抜けできると思っている訳じゃない。むしろ、縄抜けできないことを自分に言い聞かせるために、あがいてみるのだ。

「駄目だ。解けない……」
 ミツルは太い息を吐く。
「もうあきらめるの?」
 動きを止めたミツルにジュンが声をかける。
「ああ、ギブアップだよ」

「ウフフ、僕がこの縄を解いてあげないと言ったらどうする?」
 ときにジュンはとても意地悪なことを訊いてくる。
 そんな……。でももし、このまま縄を解かずにジュンが一人先に帰ってしまったら………
 ミツルは部屋の清掃をしに入ってきたオバサンが自分を呆れた目で眺めている姿を想像してみた。
 そんな羞かしい姿を人前にさらすなんて絶対に嫌だ………
 
 でも、………。でも、絶対に嫌だと思う心の中で、ほんの数パーセント、そんな目に遭ってみたいともミツルは思うのだった。自然にミツルの顔は上気していた。
「また、何考えてんだか……」
 ジュンの軽蔑したような視線に気づくと、ミツルの頬は更に真っ赤に染まるのだった、
 来いよ…
 ジュンはミツルの後ろ手縛りの縄尻を邪険に引くと、ミツルをリビングに追い立てた……。
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