陛下、猫侯爵閣下を出陣させてください
国王アルフォンス三世は、何よりも猫を愛していた。
お気に入りの白猫ミルクに侯爵位を与えたことを皮切りに、猫たちは次々と貴族になっていく。爵位には俸禄がつき、専属の侍従や料理人が置かれ、ついには猫だけのための豪華な宮殿まで建設された。
猫侯爵のための高級馬車が王都を走り、人々は道を譲って頭を下げる。貴族たちは王の寵愛を得ようと猫へ贈り物をし、やがて政策さえ猫の気まぐれで決められるようになっていった。
その一方で、国境の要塞は崩れ、兵士への俸給は滞り、人々の不満は静かに積み重なっていく。
そしてある日、北方の部族が大軍を率いて侵攻してきた。
国王は軍へ出陣を命じる。
だが将軍は剣を置き、王へ告げた。
「我々より、はるかに高い俸禄を受け取っている臣下がおります」
侯爵には甲冑を。伯爵には槍を。
この国でもっとも大切にされてきた猫たちに、国を守っていただけばよろしい――。
猫を愛しすぎた王と、それを止められなかった国が迎える、少し可笑しく、最後には笑えなくなる亡国の物語。
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