孤高の犬
飼い主に従順で、
滅多に吠えなかったその犬は
目の前の欲望に負けていた。
そして、
美味しい食べ物も
寝心地の良い寝床も
ここには全て揃っているというのに、
なぜ、
この大草原で走っているのは
「自分だけなのか。」
そう考えて立ち止まった。
サー・・・サー・・・サー・・・
川の流れる音が聴こえてきたその先には
はるか遠くで
山々が連なっていることに気づいた。
「きっとその奥には誰かがいるはずだ。」
そう考えた犬は、
はるか向こうの山脈に向かって叫喚した。
本来出せるはずのない、
まるで、狼のような甲高い声で。
届かぬはずのその声は、次第に消えてゆき、
犬をさらに孤独にさせた。
そして、犬は今までの過去を振り返った時
これまで得てきたことが、
今の孤独に繋がっていることに気がついた。
なぜならその得は、
その犬の人格・精神・思考を
一人で生きていくための基礎として変貌させたのだ。
今まで虐げられていた息苦しい環境に反抗し
虚勢を張りながら生きたその生き様が
何の意味も持たなかったことに
犬は
「滑稽だ」
そう言って前へ進めずにいる。
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